金融庁が認可している以上「悪い保険」は存在しない!?
前回、良い保険の条件を紹介しました。今回は逆に、「悪い保険」の条件を説明しようと思いますが、そもそも、悪い保険などというものはこの世に存在しません。
保険会社の監督官庁は、銀行や証券会社と同じ金融庁です。これは保険が金融商品であることを示しています。そして金融商品である保険は、すべての商品が金融庁の認可を経て募集されています。
お客様と保険の申込書を交わすこと、一般的には「販売」と呼ばれる行為を、保険業界では「募集」と言うのですが、金融庁が定める一定の基準を満たしている保険でなければ募集することができないのです。
言い方を変えれば、認可を得ている以上、「悪い保険」は存在しません。
保険料が高くても、家族の要望を叶えるのが「良い保険」
では、良い保険とはどのような保険を指すのでしょうか。
ひと言で言えば、お客様が作り上げる保険。お客様の「想い」が満たされている保険です。ですから、皆さんの「想い」ですべての保険が良い保険にもなり、悪い保険にもなるのです。
どんなに保険料が安くても、どんなに高額の保険金が約束されていても、自分の要望を満たしていなければ良い保険とは言えません。
保険料と保険金には正の相関関係があります。個別の保険商品によって多少の差はありますが、保険金の額を高く設定すれば、必ず保険料も高くなります。したがって保険料を安くすれば、保険金の額も下がる可能性があります。
もう一つ保険料を安くする方法として、保障対象を減らすという考え方もあります。例えば、死亡保険をやめて医療保険だけにしておくと、保険料の額は安くなりますが、死んでも保険金は1円も出ないことになります。
死亡保険は自分の死後、家族を守るものであるということはすでに説明しました。先ほどのライフプラン、デスプランで、死後、ご家族が生きていくのに5000万円が必要だったとします。そしてこの5000万円すべてを保険でカバーするために必要な保険料は、月々2万円だったとしましょう。
ところが、月に2万円の保険料は予算オーバーだと判断した皆さんは、保険金が3000万円の死亡保険に加入することにしました。これなら、毎月の保険料も1万8000円となり、何とか予算内です。
さて、皆さんが突然の事故で死んでしまったとします。死亡保険金として支払われるのは3000万円です。本来は5000万円が必要なはずですから、残りの2000万円をどうするかが問題です。
仮にご主人が亡くなられた場合、奥様が働けば何とかなると思うかもしれません。しかし、もし子どもが小さかったらどうでしょう。
小さな子どもを抱えて女性が充分な収入を得るのは至難の業です。突然子どもが熱を出したりして仕事を休まなければならなくなったり、残業ができなかったりと、正社員でも、非正規雇用の場合でも、収入は不安定になりがちです。収入の足りない分を稼ぐために、いくつもの仕事を掛け持ちしなくてはならないということも考えられます。
果たして、奥様がそのような苦労をする可能性があることをわかったうえで、皆さんは保険金の値段を下げたのでしょうか。おそらく、そこまで考えてはいないでしょう。単純に毎月の保険料が2000円安くなることしか見ていなかったはずです。
しかし、その2000円の理由がわかっていれば、皆さんの死後に奥様が必要以上に苦労することはなかったかもしれません。
このように言ってはなんですが、2000円です。家計を切り詰める前に「使途不明金」はありませんか? そんなに無理をしなくても、アッと思うこともあるはずです。何より「命の値段」です。
当然、今の話は例え話ですから、誰もが2000円を捻出すればいいという話ではありませんが、考え方として上乗せする金額と、残された家族の将来がどうなるか、そのことについて一度考えてみてほしいのです。
残された家族の幸せを考えるのなら、どちらを選択すべきか。よく考えてみてください。奥様の苦労を少しでも減らし、安心と安定が手に入るのなら、少しぐらい予算をオーバーしても5000万円という要望を満たした保険に加入するほうがよいのではないでしょうか。
ライフプランを考えるときに、残された家族が経済的に不自由なく生活することを考えていれば、このような保険は選びません。デスプランにおいて、これまでの生活水準がキープできるように保険を考えることができます。
もちろん、考え方は人それぞれですから安い保険を選ぶという人もいるでしょう。納得したうえでなら問題はありません。しかし、安易に保険料の安いほうを選ぶと、いざというときになって「思っていたよりも保険金が少ない」、もしくは「保険金がまったく出ない」こともあり得ます。
そうなると、せっかく加入した保険が役に立たない保険になってしまいます。
先ほどから述べている「役に立たない保険」、これこそが言うならば「悪い保険」です。支払ってきた保険料が無駄になってしまうのですから、それ以外に言いようがありません。そう考えれば、すべての保険が「良い保険」にも、「悪い保険」にもなり得ることがわかるでしょう。