(画像はイメージです/PIXTA)

ウクライナ侵攻とアメリカを巡って、「バイデン大統領が“弱い”から起きたのでは?」「アメリカはなぜ派兵しないんだ」「トランプ氏が大統領だったらこんなことには…」という意見が聞かれることは多い。バイデン大統領は“弱い”大統領なのだろうか。そしてトランプ大統領なら、侵攻を食い止められたと言えるのだろうか。バイデン大統領の考え方や、世論調査から読み取れるアメリカ国民の思いとともに、明治大学政治経済学部・海野素央教授が解説する。

米国民が「ウクライナへの派兵は悪い考え」とするワケ

エコノミストの世論調査では、「ロシア兵と戦うためにウクライナへ派兵するのはよい考えか?」という問いがウクライナ侵攻の開始からずっと設けられている。最新の調査では「良い」が18%、「悪い」が54%であったが、実はこの傾向は当初からずっと変わっていない。

 

日本のコメンテーターのなかには米軍の積極的関与を指摘する人もいるが、当のアメリカ国民は過半数が「送ってはダメだ」と考えているのである。

 

アメリカ第一主義を掲げるトランプ氏支持者であればともかく、バイデン氏支持者でさえ48%が派兵について「悪い」考えとしている。

 

日本ではウクライナの惨状が放送される際、遺体にぼかしを入れられているが、アメリカではぼかしのない映像が放送されることもある。そうした悲惨な光景を見ても、「派兵するのは良くない」という考えは変わらず、むしろそれを見れば見るほど派兵が「悪い」という考えは強くなっていることが予想される。

 

「なぜ派兵しないのか」と他国で議論されようと、当のアメリカ国民は「アメリカは戦うべき」などという考えを持っていないのだ。

バイデン大統領「ウクライナへ派兵しない」宣言のワケ

バイデン氏はなぜ、ウクライナ侵攻が始まってすぐの段階で「軍を出さない」と明言したのか、という疑問や批判も聞かれる。これについても、バイデンのものの見方、考え方を理解するとわかるはずだ。

 

筆者はずっと、バイデン氏のスピーチを聞き、その原稿を読んできている。そうして感じた「バイデン氏がトランプ氏と決定的に違うところ」は、スピーチのなかで「父親・母親」について非常によく語るところである。トランプ氏が親について語ることは滅多にない。

 

そしてスピーチのなかで、「父から学んだこと」として「意図しない戦争ほど最悪のものはない」という言葉を紹介したことがある。

 

バイデン氏の「ロシアと第三次世界大戦をやるべきではない」という言葉は、「意図しない戦争を起こしてはいけない」考えからきているのだろう。ロシアとの間に意図せぬ戦争が起きれば、それは第三次世界大戦となる。

 

だから、最初から「ウクライナには兵士を送らない」と言うことで「ロシア兵と戦うために派兵することはない」と宣誓したのではないだろうか。あえて明言することで、ロシアにはっきりとしたメッセージを送ったのだと解釈できる。

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