(写真はイメージです/PIXTA)

わたしたちが生きていくうえで重要な役割を担っている「視覚」。ですが、歳をとって老眼・白内障になり、生活に支障出ているという人も少なくありません。そこで、京都大学の名誉教授である鎌田浩毅氏と、関西の大学受験予備校「研伸館」物理専任講師の米田誠氏が、加齢によって目に起こるトラブルの原因について解説します。

歳を重ねるにつれて生まれる「目のトラブル」

水晶体は劣化する

このように、人間はものを見るときに無意識のうちに水晶体の厚さを変化させてピントを合わせています。

 

ところが、この水晶体が劣化したり、筋肉の動きが衰えたりすることがあります。

 

白内障と老眼です。多くの方が聞いたことがあるでしょう。

 

どちらも加齢に伴う目のトラブルで、軽い症状を含めると40歳以上の日本人のおよそ半数が老眼か白内障を患っているともいわれます。もしかしたら、本文を老眼鏡越しにご覧になっている方もいらっしゃるかもしれません。

共に老化が原因!老眼・白内障になる原理

実は、老眼も白内障も水晶体の劣化や変質によって引き起こされる症状です。

 

老眼は先程述べた水晶体のピント調節機能が低下するために起こるものですが、その要因の1つに、水晶体が硬くなることがあります。タンパク質でできている水晶体は、加齢にともない新陳代謝が衰えることで全体に十分な栄養が行き届かなくなり、硬くなっていきます。

 

また、水晶体の厚さを変化させる毛様体筋の筋力が衰えることもピント調節がうまくいかなくなる理由です。こういった原因が重なり合い、老眼という症状につながるのです。

 

一方の白内障は、太陽光中の紫外線によって水晶体が白く濁っていくことが原因です。若いうちには体内の酵素によって水晶体の白濁を防いでいるのですが、加齢に伴い酵素の生産量がだんだんと少なくなるため水晶体が白濁していき、視界の「もや」が徐々に濃くなっていきます。

 

老眼は老眼鏡をかけることによってピント調節を助け、生活における不便を減らすことができますが、白内障はそうはいきません。水晶体自体を取り替えないことには症状を改善することができないのです。ですから、白内障の場合は水晶体の代わりとなる人工的なレンズを埋め込んで治療することになります。

 

ただ、以上のようにどちらの症状も加齢に伴う水晶体の劣化・変質が原因ですから、白内障の治療と同時に老眼の改善も行なうことができます。

 

 

鎌田 浩毅

京都大学

名誉教授

 

米田 誠

研伸館

専任講師

 

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本連載は鎌田浩毅氏米田誠氏の共著『一生モノの物理学』(祥伝社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

一生モノの物理学 文系でもわかるビジネスに効く教養

一生モノの物理学 文系でもわかるビジネスに効く教養

鎌田 浩毅・米田 誠

祥伝社

京都大学名誉教授の鎌田浩毅氏と、関西の大手予備校「研伸館」の専任講師の米田誠氏という、二人の「理系を教えるプロフェッショナル」がビジネスパーソン向けに執筆した本書は、医療や日常の中にあるテクノロジーを題材にしな…

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