日本のなかでも有数の都市圏として発展してきた京阪地域。ここはかつて湖であり、歴史上、何度も海水が流入して水没していたことが研究によって解明されています。しかし、この度重なる水没が、現在の発展をもたらしたとされています。一体どういうことでしょうか? 元国土交通省河川局長で日本水フォーラム代表理事の竹村公太郎氏が解説します。
火山の多い群馬県は「日本のポンペイ」?
イタリアの古代都市ポンペイは、付近にあるヴェスヴィオ火山の噴火により、わずか19時間で壊滅してしまったと考えられています。一方、日本の群馬県でもポンペイのように火山灰や火砕流に襲われた遺跡が2つも発見されています。
KEY WORD
榛名山、浅間山
群馬県の大きな特徴は、上毛三山を始めとする火山の多さでしょう。火山は温泉や地熱といった恩恵をもたらしますが、同時に噴火という大災害を引き起こしてきました。
その悲惨さを表すのは、榛名山の北東に位置する古墳時代の「黒井峯遺跡」です。6世紀に2回も起きた榛名山二ツ岳の噴火で噴出した軽石層によって集落が埋もれてしまっています。1982年に行われた調査では、大小の竪穴式住居、平地式住居や倉庫、牛や馬を飼育していた家畜小屋などの建物のほか、苗代や道などが発見されました。
さらに、1783年、江戸時代の浅間山噴火で埋没した、浅間山北麓の吾妻郡嬬恋村鎌原の「天明三年浅間焼け遺跡」も有名です。
噴火の火砕流が北麓を三方に流れ、118戸あった鎌原村を襲って住民約570人のうち生き延びたのは、村外に居た人間と高台にあった観音堂の石段を駆け上がって退避した93人だけでした。この石段の下では、母親を背負って退避する途中で火砕流に追いつかれた女性の遺体も発見されています。直撃を受けた集落は消滅し、下流河川の被害も甚大でした。
これらの遺跡は火山によって壊滅したイタリアの都市ポンペイにちなんで、「日本のポンペイ」とも呼ばれています。こうした災害は、村落と火山の距離の近さも原因でしょう。ポンペイと火山の距離は20kmですが、先の榛名山と黒井峯遺跡の距離は10kmです。
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元国土交通省河川局長
日本水フォーラム代表理事
1970年東北大学院土木工学修士課程修了。同年、建設省(現・国土交通省)入省。中部地方建設局河川部長、近畿地方建設局長を歴任し、2002年に国土交通省河川局長を最後に退官。2004年リバーフロント整備センター(現・リバーフロント研究所)理事長。2014年同研究参与。2006年日本水フォーラム代表理事・事務局長。
著書に『日本文明の謎を解く』(清流出版、2003年)、『土地の文明』(PHP研究所、2005年)、『幸運な文明』(PHP研究所、2007年)、『本質を見抜く力(養老孟司氏との対談)』(PHP新書、2008年)、『日本史の謎は「地形」で解ける』(PHP文庫、2013年)、『地形から読み解く日本の歴史』(宝島社、2014年)、『水力発電が日本を救う』(東洋経済新報社、2016年)、『広重の浮世絵と地形で読み解く江戸の秘密』(集英社、2021年)、『“地形と気象”で解く!日本の都市誕生の謎 歴史地形学への招待』(ビジネス社、2021年)など。
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