(※写真はイメージです/PIXTA)

ロシアによるウクライナ侵攻以降、国際社会では緊張が続いている。このウクライナ問題は、ロシアや東欧だけでなく、米国や中国、核問題、サイバーテロ、最新兵器など多様な問題が絡み合い、複雑さを増している。ロシアによるウクライナ侵攻が深刻さを増すにつれ、テロ・過激主義の観点からも懸念の声が広がっている。安全保障、国際テロ専門家が解説する。

外国人義勇兵を受け入れるゼレンスキー大統領

しかし、ソーファンセンターのレポート(https://thesoufancenter.org/intelbrief-the-transnational-network-that-nobody-is-talking-about/)によれば、2019年3月にニュージーランド・クライストチャーチで起きたモスク銃乱射テロ事件犯人は、組織的な背景こそなかったものの、2011年7月にノルウェー連続テロ事件を起こしたアンネシュ・ブレイビクと交流があったと主張。犯行時に着用していたベストには、アゾフ大隊のシンボルマークが縫い付けられていた。

 

また、2017年にスウェーデンの移民・難民支援施設を狙った爆弾テロで逮捕された2人は、いずれも「北欧抵抗運動」のメンバーで、ウクライナ東部の分離独立運動に参加しているロシアの極右組織「ロシア帝国運動(RIM)」からロシア国内で軍事訓練を受けていた。

 

米国の極右団体「ブラウドボーイズ」や「オース・キーパーズ」の構成員が関与していた2021年1月の米議会襲撃事件では、欧州各国の白人極右過激主義者たちも事件を称揚するメッセージを繰り返し発信した。長引くコロナ禍で社会経済的な不満を高める白人の若者をターゲットに、極右過激派組織はオンラインでのリクルート活動をより活発化させてもいる。

 

こうした状況を受け、各国は白人至上主義の極右過激派によるテロの可能性を真剣に懸念し始めている。バイデン政権は昨年6月に策定した国内テロ対策の国家戦略の中で、白人至上主義的なテロを強く警戒(https://www.justice.gov/opa/speech/attorney-general-merrick-b-garland-remarks-domestic-terrorism-policy-address)。国連のグテーレス事務総長も、白人極右によるテロの脅威を強く指摘している(https://www.reuters.com/article/us-un-rights-idUSKBN2AM0NX)。

 

カナダ政府は昨年2月、「プラウドボーイズ」をテロ組織に指定、米国政府も2020年4月、ロシアの「ロシアン・インペリアル・ムーブメント」をアルカイダやイスラム国と同等のテロ組織に指定した。

 

国境を超えた連携を作っている欧米の白人極右過激派にとって、目下のウクライナ情勢はその戦闘力を強化する機会となる恐れがある。この3カ月間、ウクライナのゼレンスキー大統領は外国人義勇兵/戦闘員を諸外国から積極的に受け入れる姿勢を堅持している。これまでに52か国から2万人が集結したとも言われ、今後も増えるかも知れない。しかも、欧米各国はウクライナを軍事的に支援し続けており、その中で提供される各種の最新兵器が外国人戦闘員に渡り、対ロシア戦闘の最前線で使用されることは想像に難くない。

「義勇兵・武器供与・実戦機会」の3点セット

ウクライナが人外国人義勇兵/戦闘員を募っていることに対して、国際社会では今のところよいイメージが先行している。当然ながら、ロシアの侵攻は国際法的にも道義的にも許される問題ではなく、とくにウクライナへの人道支援はさらに強化されなければならない。

 

しかし、この問題を「テロ・過激主義」の研究の視点から捉えると、1つのリスクを内在していると言わざるを得ない。ヴァージニア・コモンウェルス大学ワイルダー行政・公共政策大学院で国土安全保障や緊急事態対応を研究しているベンジャミン・R・ヤング准教授は、2022年3月14日のワールド・ポリティクス・レビューに「ウクライナは極右のアフガニスタンになる可能性がある」(https://www.worldpoliticsreview.com/articles/30392/ukraine-could-become-the-far-right-s-afghanistan)と題した論考を寄稿した。

 

1980年代のアフガン紛争では、世界中から集ったイスラム義勇兵が、アメリカ製の携行地対空ミサイルを手にソ連軍と激しい戦闘を繰り広げた。准教授はその戦いが、のちのグローバル・ジハード運動の温床となった事実を指摘。「反乱軍を支援し武装化することは、後に予測不能な災厄をもたらす可能性がある」と警告した。世界から集まる義勇兵、西側からの武器供与、そして実戦機会のセットは、現在のウクライナと確かに共通している。

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