高齢夫の逝去で「生活困窮妻」続出のワケ…〈年金無知〉が陥る悲惨な老後生活【税理士が解説】

高齢夫の逝去で「生活困窮妻」続出のワケ…〈年金無知〉が陥る悲惨な老後生活【税理士が解説】
※写真はイメージです/PIXTA

夫が亡くなったあと、遺族年金の少なさを知って驚く妻は少なくありません。今回は、65歳以上の遺族年金について見ていきます。必ず知っておきたい保険料と年金額のしくみについて、生徒&先生の質疑応答形式で専門家が平易に説明します。

夫の死後、夫の老齢基礎年金&老齢厚生年金はゼロに

先生:その後、妻が65歳になれば、妻も老齢基礎年金と老齢厚生年金をもらえるようになる。老齢基礎年金は、夫と同額の月6万5000円くらいだけれど、老齢厚生年金は、夫のように60歳の定年まで働かないと、その分少額になってしまう。ここでは月3万3000円くらいに想定しようか。

 

生徒:「定年まで共働き=老齢厚生年金もダブルでもらえる」ってことですね。合算すると32万円! 毎月これだけ年金をもらえれば、老後の生活費は心配ないですね。

 

[図表2]老齢年金

 

先生:しかし、夫が亡くなると…。夫がもらっていた老齢基礎年金はゼロ、そして老齢厚生年金もゼロになってしまう。

 

生徒:半減するわけですか。それでは妻の生活が厳しくなってしまいますね…。

 

先生:その通り。生活が苦しくなってしまうから、妻には「遺族厚生年金」が支給されることになるんだ。

 

生徒:妻は「老齢厚生年金」と「遺族厚生年金」の両方もらえるということですか?

 

[図表3]遺族厚生年金

 

先生:そうなんだけれど、満額もらえるわけじゃないんだ。次の3つのパターンの金額を計算して、そのうち、最も高い金額が自動的に選択されることになるよ。

 

パターン①:妻の老齢厚生年金

パターン②:夫の老齢年金の4分の3

パターン③:夫の老齢厚生年金の半分+妻の老齢厚生年金の半分

 

生徒:これは計算が大変そう…。

 

[図表4]併給調整

 

先生:パターン①は、妻の老齢厚生年金がそのまま支給されるケース。現役時代に妻の稼ぎのほうが大きかった場合はこれになるね。

 

生徒:なるほど…。

 

先生:パターン②は、夫の老齢厚生年金の4分の3となるケース。たとえ4分の3でも、妻の老齢厚生年金より多い場合が考えられるね。ほとんどのご夫婦はこのパターンに該当する。

 

生徒:うちの両親は、きっとこのパターンになると思います。

 

先生:そしてパターン③は、夫の老齢厚生年金の半分と、妻の老齢厚生年金の半分を合算した金額。仮に、夫の老齢厚生年金の金額が135万円なら、妻の老齢厚年金40万円を差し引いた残額95万円が遺族厚生年金として支給されるんだ。

 

生徒:それだと、妻がもらえる年金はいくらになりますか?

 

先生:老齢基礎年金月6万5000円、老齢厚生年金3万円強、遺族厚生年金8万円、合計で18万円くらいかな。

 

生徒:夫が存命中は2人で32万円だったわけですから、4割も減額されてしまうってことですね! 遺族厚生年金が出ても、妻の生活は厳しくなるでしょうね…。

 

先生:その通り。65歳以上になってからこの事実を知って、驚くご夫婦がとても多いんだ。年齢を重ねてから慌てないためにも、早い段階で年金の仕組みを理解して、備えておく必要があるね。

 

 

 

大貫 友久(おおぬき ともひさ)
税理士
吉岡マネジメント・グループ/税理士法人日本会計グループ 代表社員・理事長

 

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