夫の死後、夫の老齢基礎年金&老齢厚生年金はゼロに
先生:その後、妻が65歳になれば、妻も老齢基礎年金と老齢厚生年金をもらえるようになる。老齢基礎年金は、夫と同額の月6万5000円くらいだけれど、老齢厚生年金は、夫のように60歳の定年まで働かないと、その分少額になってしまう。ここでは月3万3000円くらいに想定しようか。
生徒:「定年まで共働き=老齢厚生年金もダブルでもらえる」ってことですね。合算すると32万円! 毎月これだけ年金をもらえれば、老後の生活費は心配ないですね。
先生:しかし、夫が亡くなると…。夫がもらっていた老齢基礎年金はゼロ、そして老齢厚生年金もゼロになってしまう。
生徒:半減するわけですか。それでは妻の生活が厳しくなってしまいますね…。
先生:その通り。生活が苦しくなってしまうから、妻には「遺族厚生年金」が支給されることになるんだ。
生徒:妻は「老齢厚生年金」と「遺族厚生年金」の両方もらえるということですか?
先生:そうなんだけれど、満額もらえるわけじゃないんだ。次の3つのパターンの金額を計算して、そのうち、最も高い金額が自動的に選択されることになるよ。
パターン①:妻の老齢厚生年金
パターン②:夫の老齢年金の4分の3
パターン③:夫の老齢厚生年金の半分+妻の老齢厚生年金の半分
生徒:これは計算が大変そう…。
先生:パターン①は、妻の老齢厚生年金がそのまま支給されるケース。現役時代に妻の稼ぎのほうが大きかった場合はこれになるね。
生徒:なるほど…。
先生:パターン②は、夫の老齢厚生年金の4分の3となるケース。たとえ4分の3でも、妻の老齢厚生年金より多い場合が考えられるね。ほとんどのご夫婦はこのパターンに該当する。
生徒:うちの両親は、きっとこのパターンになると思います。
先生:そしてパターン③は、夫の老齢厚生年金の半分と、妻の老齢厚生年金の半分を合算した金額。仮に、夫の老齢厚生年金の金額が135万円なら、妻の老齢厚年金40万円を差し引いた残額95万円が遺族厚生年金として支給されるんだ。
生徒:それだと、妻がもらえる年金はいくらになりますか?
先生:老齢基礎年金月6万5000円、老齢厚生年金3万円強、遺族厚生年金8万円、合計で18万円くらいかな。
生徒:夫が存命中は2人で32万円だったわけですから、4割も減額されてしまうってことですね! 遺族厚生年金が出ても、妻の生活は厳しくなるでしょうね…。
先生:その通り。65歳以上になってからこの事実を知って、驚くご夫婦がとても多いんだ。年齢を重ねてから慌てないためにも、早い段階で年金の仕組みを理解して、備えておく必要があるね。
大貫 友久(おおぬき ともひさ)
税理士
吉岡マネジメント・グループ/税理士法人日本会計グループ 代表社員・理事長