クレームに対する2つの「備え」
①防犯カメラの設置
私が考える備えは2つあります。1つは防犯カメラの設置です。当院では受付まわり、診察室など、外来者と職員の接触が多い場所に防犯カメラを設置しています。常に録画しており、容量がいっぱいになると古い動画から自動的に削除されていきます。もちろん、音声も同時に録音されなければ意味がありません。カメラの設置台数にもよりますが、1週間程度は保存できるようです。もっと長期間保存しておいたほうがよかったという事例も稀にありますが、ほとんどは1週間程度で事足ります。
防犯カメラがあることがわかると、クレーマーの常習者には抑止力として働きます。彼らはツボを心得ているからこそ、その効力を知っており、防犯カメラの前ではうかつなことを言わないように心がけています。受診患者さんからの電話連絡で「財布をなくした」と言われた際、防犯カメラで記録画像を確認し、受付では問題のないことが判明したこともあります。
②患者さんを「xx様」と呼ばない
もう1つの備えは患者さんの呼称です。これは仮説の域を出るものではありませんが、私の感覚として書きます。当院では、開業以来、「xxさん」とお呼びし、当時、広まっていた「xx様」は採用しませんでした。医療は接客業ではなく、もっと親しみやすい関係性が求められるという私の考えに基づくものでした。これまで、いわゆるモンスター・ペイシェントは発生しておらず、患者さんの呼称も寄与しているのではないかと思っています。
クレーム対応のコツ
医療を行い、事業を起こしている限り、クレーマーは避けることはできません。どんな事例においても誠実に対応していくしかないのですが、少しでもコツを知っておくとよいでしょう。
話し合いのセッティングの際の大原則は、「間」をとることです。電話でも直接の対話でも、状況が許せば20~30分は間を空けましょう。これは相手の感情の鎮静化を図る意味でとても大切です。もちろん、見込みなく待たせすぎて、余計に怒りを買うということもあり得ますので、「〇分後にこちらから電話をかけます」「〇時までこのお部屋でお待ちいただけますか」といった対応が必須です。
もう1つの原則は、配置の問題です。相手と真正面に相対するのは、心理学的にも避けるほうがよいとされています。相手との位置関係が90度という状況はつくりにくいかもしれませんが、少なくとも斜め向かいという程度を心掛けましょう。そして、できれば、一人よりも複数で面談することです。
老木 浩之
医療法人hi-mex 理事長
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