ゼロコロナ政策で主要経済指標が悪化
■中国経済が急減速しています。中国国家統計局が16日に発表した、生産、消費、投資などの4月の主要経済指標はいずれも事前の市場予想を下回り、大幅に悪化しました。新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込めるゼロコロナ政策により、上海市などで都市封鎖(ロックダウン)が行われているため、消費や企業活動が大きく停滞していることが明らかになりました。
■鉱工業生産は前年同月比▲2.9%と、前月の+5.0%からマイナスに転じ、新型コロナウイルスの流行直後の2020年3月以来の前年割れとなりました。自動車生産が▲43.5%となるなど、ロックダウンによる外出制限の影響や物流の混乱による部品不足で工場の操業停止や減産が相次ぎ、生産は大きく落ち込みました。
■小売売上高は前年同月比▲11.1%と、前月の▲3.5%からマイナス幅が一段と拡大しました。外出制限が続いた影響で飲食業が▲22.7%と前月の▲16.4%からさらに悪化したほか、自動車の販売が▲31.6%と前月の▲7.5%から大きく落ち込んだことなどが要因です。
■1~4月の固定資産投資は前年同期比+6.8%と、1~3月の+9.3%から伸び率が縮小しました。このうち不動産開発投資は▲2.7%と、2020年5月以来のマイナスに転じました。住宅購入制限の措置が緩和されたものの、住宅市場は引き続き停滞している模様です。
上海市がロックダウン解除へ
■3月下旬以降ロックダウンを続ける上海市は16日、外出制限を段階的に撤廃し、6月中にロックダウンを解除する方針を発表しました。感染拡大に歯止めが掛かったと判断したことを受けたものです。上海市はロックダウン解除に向けて、ゼロコロナの新たな定義(隔離エリア外の新規感染者)を設定していました。ゼロコロナ政策は実質的に緩和の方向とみられます。
■今後中国政府が、秋の共産党大会に向けて景気支援策を積極化することで、急減速した中国景気は年後半に持ち直す公算が強まったとみています。
中国株は景気減速を織り込み済み、持ち直しへ
■中国本土市場の代表的な株式指数の1つである深センCSI300指数は16日、反落しました。4月の主要な経済統計が市場予想を下回る低調な結果となり、景気下振れ懸念から売りが膨らみました。一方で、上海市が6月にロックダウンを解除する方針を示したことや、人民銀などが住宅ローン金利の下限を引き下げると発表したこともあり、下落幅は小幅となりました。
■中国株は今年に入り、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め加速観測や、中国政府のゼロコロナ政策による上海市などのロックダウンから、中国景気の先行きが懸念され、軟調な展開となっています。ただし、米国の金融引き締めや中国の景気減速は相当程度市場に織り込まれた可能性があります。深センCSI300指数の株価評価(バリュエーション)をみると、足元の予想PERは12倍割れと、コロナ前の水準に戻っており、割高感はありません。
■他国の経験則からもコロナ感染拡大はいずれピークアウトし、市場もコロナ後の経済再開を視野に入れ始めると考えられます。これに伴い徐々に企業業績への不安が後退し、株式市場は持ち直すとみられます。なお、感染力が強いオミクロン型の感染が再び拡大するリスクもあり、この点には一定の注意が必要とみられます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国経済は急減速も、上海はロックダウン解除へ…今後の展開は?【専門家が解説】』を参照)。