(※写真はイメージです/PIXTA)

「向かい風だから離陸できる」。これはアメリカの実業家、ヘンリー・フォードの格言です。航空会社にとってコロナ禍はまさに「向かい風」となり、破綻に追い込まれる企業が相次ぎました。その一方で、困難を乗り切り需要回復に成功した企業も…。一体何が航空会社の明暗を分けたのでしょうか? ヨーロッパ株を中心に欧米株に精通したキャピタル アセットマネジメント株式会社が解説します。運用者の目線から、事例を交えつつ世界のツーリズム業界の動向を見ていくことで、資産運用の参考になるかもしれません。

コロナ規制の影響を最も受けた「航空業界」

新型コロナウイルス感染症パンデミックに対する規制措置として、渡航制限、入国制限、自主隔離などの言葉をよく耳にしましたが、これらの規制措置の影響を最も受けたのが航空業界であったのは紛れもない事実です。旅客数が激減したため、航空会社は減便や機内ガラガラの状態での運行を余儀なくされ、厳しい経営環境に置かれることになりました。経営状況を精査する間もなく破綻に追い込まれる企業も国内外で相次ぎ、航空業界への打撃は深刻さを増すばかりとなりました。

 

航空業界は、コロナ禍以前から、他社との差別化に成功した企業のみが生き残れるという厳しい競争に晒されていました。新型コロナウイルス感染症パンデミックの発生でより財務状況が悪化し、潜在的な倒産リスクが高まったと思われます。一方で、航空会社には、他業種よりも、政府支援の対象になりやすいという利点がありました。中でもフラッグ・キャリアと呼ばれる国を代表する航空会社は、優先的に政府の支援を受けられたようです。

 

“存続可能性の大きい航空会社には二つのタイプがある。一つは、堅実なビジネスモデルと強固なバランスシートを持ち合わせている航空会社。もう一つは、政府の保護のもとにあるレガシー・キャリア(既存の航空会社)。”(筆者抄訳)

 

――これは、2021年4月22日に経済協力開発機構(OECD)が公表したワーキングペーパー“State Support to the Air Transport Sector: Monitoring developments related to the Covid-19 crisis”(航空業界に対する政府支援:Covid-19危機対策の進展〔筆者訳〕)の冒頭に引用されたThe Economist(2021年2月13日)の記事の一節ですが、航空業界の状況を的確に表しています。

 

2020年のメーデーに、シンガポールのリー・シェンロン首相は、自国のフラッグ・キャリアであるシンガポール航空について、「シンガポールが国際的かつ地域的な拠点としての役割を果たす上で、航空輸送は基盤をなす戦略的なセクターである。それゆえ、政府は航空産業に特別な支援を提供する。シンガポール航空は、世界中でシンガポール国旗を高々と掲げてきてくれた。これからもそれが続けられるように、政府は支援を惜しまない(筆者抄訳)」と述べています。リー・シェンロン首相の言葉は、フラッグ・キャリアが国家にとっていかに重要なものかを物語っています。

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