コロナ禍のツーリズム…日本とヨーロッパの「驚くべき温度差」 (※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍は、世界のツーリズム業界にどのような変化をもたらしたのでしょうか。日本ではオフシーズンや密集しない観光地などの需要が高まったり、近隣地域内で観光する「マイクロツーリズム」や、1泊のみといったケースが増加したりなどの変化が見られました。一方、欧州ではまったく異なる動向にあるようです。世界ツーリズム株式ファンド(愛称:世界の旅)を運用するキャピタル アセットマネジメント株式会社が、コロナ禍におけるツーリズム業界の動向を解説します。

「日本のツーリズム、欧州のツーリズム」の決定的違い

日本で、とかくツーリズムというと、旅行・観光業目線で地域振興を含めた地域産業の収益化が強調されがちです。ツーリズムを巡る議論の大半は、いかに観光客を呼び込めるかが最大の焦点であり、それが議論の目的でもあります。「おもてなし」を重んじるわが国の旅行・観光業からすればそれは当然なのかもしれません。しかし、ヨーロッパ人の目線でツーリズムを考えるとき、もっと別の観点から語られるべきものではないかと思われます。

 

ツーリズムに明確な定義はなく、観光と同義と考える向きもありますが、私が思うには、ツーリズム大国スペインに居を置く世界観光機関(UNWTO)がツーリズムを「レジャー、ビジネス、その他の目的で、連続して1年を超えない期間、通常の生活環境から離れた場所を旅行したり、そこで滞在したりする人の活動」(UNWTO「観光統計に関する勧告」1993)と定義していることを無視できません。

 

なぜなら、そこでは明確に述べられてはいませんが、ツーリズムは「人間にとって自己形成に必須な体験、知見の拡大」「健康の維持」「生活の質の向上」といった、衣食住に勝るとも劣らない基本的かつ重要な生活上の要件だと考えていると思われるからです。

 

上記の通り、ツーリズムにはビジネスに起因するものも含まれていますが、なんといってもバカンス(連続してとる休暇)によるものが多く含まれます。そしてこのバカンスの捉え方がヨーロッパ人と日本人で大きく異なることが、ツーリズムに関する上記のような日欧間の温度差の原因ではないかとも思えるのです。

 

スペインと並ぶツーリズム大国であるフランスでは年間5週間の有給休暇が認められており、その取得率はほぼ100%となっています。また同じくツーリズムに力を入れているドイツはそもそも休暇=バカンスと考えられてきたこともあり、一定期間、職場や居宅から離れることを意識したものになっていると思われます。

 

ヨーロッパ人にとってこのバカンスは、1年をかけてその費用を貯金し、数ヵ月前から計画を立てるなど周到な準備のもとに実行する、人生で無くてはならないイベントともいえるものなのです。

 

翻って日本では6.5年以上継続勤務をして、ようやく20日の有給休暇の付与を受けられることになっています。厚生労働省の調査(令和3年)によると、有給休暇の平均付与日数は17.9日で、その取得率は56.6%となっており、平均でせいぜい年間10日程度の休みに止まっています。すなわち日本人にとって休暇とは、土日や短期間の休暇を手短(安近短)に過ごす余暇がほとんどであると推測されます。つまり、日本人の「休暇観」は、生活上不可欠であると信じているヨーロッパ人の“バカンス観”とは質的・量的に大きく異なるものだと言わざるを得ないのです。

コロナ禍でもバカンスシーズンは必要不可欠

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、いかにして生活上不可欠な“バカンス”をとるのか、ヨーロッパ人は頭をひねることになります。コロナ禍の中にあってバカンスシーズンを無事に迎えるための対策を講じることが、欧州各国の政府に課せられた主要な職責のひとつになったのは間違いありません。ヨーロッパのバカンスシーズンは5月から始まります。欧州各国は、それまでに何とか新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めをかけなければなりません。

 

欧州各国は、外出制限、渡航制限、国境封鎖などありとあらゆる規制措置をとります。それもバカンスシーズンまでに新型コロナウイルスの感染拡大に目途をつけるためです。バカンスシーズン前に新型コロナウイルスの感染者数を最小限に抑え、各種規制の緩和に漕ぎ着けるというのがシナリオになります。

 

ヨーロッパのバカンシエ(休暇をとる人)は太陽を求めて南欧を選ぶ傾向が強いようです。南欧諸国にとっては書き入れ時となります。他国に先を越されぬよう抜かりなく計画を立てなければなりません。

 

昨年の南欧諸国の集客施策をみてみるとその気合の入れようを窺い知ることができます。まず、ギリシャが動きました。ギリシャ政府が、5月14日を観光シーズンの幕開けと宣言し、観光客の受け入れを再開したのです。そして、5月16日にはイタリアが観光客の受け入れを再開、ポルトガルはその翌日の5月17日に観光客の受け入れを再開しました。南欧諸国の観光客受け入れ再開と呼応するように、旅行代理店はバカンシエのために南欧便の座席を確保し、数多くの南欧向けツアーを企画・販売しました。

「欧州のバカンス観」がコロナ禍のツーリズムを支えた

南欧諸国の人気観光スポットは英国やドイツからバカンシエで溢れかえりました。欧州各国の政府と観光業界、特に旅行会社、航空会社、ホテル業界などとの連携と結束力が見事に機能し、生活上不可欠な“バカンス”を守ったのです。同時に、観光立国は面目躍如を果たすことができたのです。

 

盛り上がったのは人気スポットへの観光だけではありませんでした。新型コロナウイルスの感染拡大が下火になったからといって、感染のリスクがゼロになったわけではありません。他人との濃厚接触を避けてバカンスを楽しみたいというニーズの高まりに応え、飛躍的に需要を伸ばしたのがキャンピングカー業界でした。ヨーロッパでは高速道路を使って容易に外国旅行もできます。コロナ禍の中で、バカンスをより気軽なものにしたのがキャンピングカーでした。

 

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を直接的に受け、未曽有のマイナス成長を経験したツーリズム業界ですが、これを支えたのは、いかなる状況にあってもバカンスを楽しみたいというヨーロッパ人の「バカンス観」であったと思います。世界ツーリズム株式ファンド(愛称:世界の旅)は、このヨーロッパ人の「バカンス観」に立ち、旅行者目線で投資対象を選んでいるところが最大の特徴です。この視線から、コロナ禍の中でのツーリズム各業態の動向を振り返り、当ファンドの核心のご理解に役立てていただきたいと思います。

 

 

キャピタル アセットマネジメント株式会社

 

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    キャピタル アセットマネジメント株式会社は2004年に発足した中堅の運用会社です(写真:代表取締役社長・山崎年喜氏)。

    ベトナム、フィリピン、アセアン諸国などの新興国市場・企業の株式に投資するファンドを運用し、中でもベトナムの株式運用については第一人者であると自負しています。

    弊社の運用チームは、独自の運用手法とグローバルな情報ネットワークを駆使しており、弊社はクオリティーの高い商品の提供に努めております。投信業界初の公募投信ESG(環境・社会・ガバナンス)日本株ファンドの運用を2017年に、日本ではあまり前例のない世界ツーリズム株式ファンドの運用を2019年に開始しております。

    私共キャピタル アセットマネジメントは中堅ながらもユニークで存在感ある会社となるべく、付加価値の高い商品を研究し、受益者の皆様の運用ニーズにお応えすると共に、資産運用業界の発展に貢献出来るよう努力して参ります。

    著者紹介

    連載コロナ禍における「世界のツーリズム業態」の動向

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