(※写真はイメージです/PIXTA)

いまや日本人の3人に1人が脂肪肝であり、放置すると肝硬変や肝がんへと進行する――。にわかには信じられないことかもしれませんが、これは最近の研究で明らかになった事実です。なぜ脂肪肝が肝硬変や肝がんへと繋がりうるのでしょうか? 最近の研究でわかってきた事実を基に見ていきましょう。みなと芝クリニック院長・川本徹医師が恐ろしい「炎症」について解説します。

慢性炎症と老化は切っても切れない関係

慢性炎症は、多くの人が大なり小なり抱えているといっていいでしょう。なぜなら慢性炎症は加齢に伴って起きやすくなるものだからです。

 

その理由はいくつかあります。

 

【死んだ細胞が増える】

死んだ細胞は体にとって異物となるため、通常は免疫細胞のマクロファージ(白血球の一つ)が食べて処理してくれています。しかし加齢に伴って免疫力が低下してくると、死んだ細胞の食べ残しが増えていきます。すると免疫細胞にとってそれが刺激となり、慢性的に炎症が続くことになります。

 

【細胞の老化】

老化した細胞は処理されず、そのまま体内に残りやすくなります。すると炎症シグナルが分泌され続けるという状況になります。結果として、周囲の組織に炎症が広がり発がんを促すような環境が作られてしまいます。

 

【中性脂肪の増加やホルモンの変化】

肥満は全身の組織に炎症を誘導することが分かっています。食べ過ぎや運動不足などによって、消費されなかったエネルギー(中性脂肪)が増えていくと、皮下脂肪や内臓脂肪、異所性脂肪(肝臓、筋肉、骨髄など)に脂肪がたまっていくのです。その過程で炎症が起こることになります。なかでも内臓脂肪は、慢性炎症を活発にする厄介な脂肪です。

 

年齢に伴う代謝やホルモンの変化も、炎症を促進する可能性があります。特に女性は閉経後エストロゲンの分泌が激減する影響から、ケモカインというサイトカイン物質が分泌されるようになり、低レベルの炎症状態が誘導されるといわれています。また閉経後は、女性ホルモンの作用が弱まることから中性脂肪の値が増加します。つまり肥満になりやすい体質となり、かつ慢性炎症が誘導されやすくなります。

 

さらに老化により慢性炎症が起きると、老化が加速し慢性炎症も増大するという負の連鎖が起きてくるようになります。体をじわりじわりと蝕む慢性炎症を、抑える方法はあるのか、またどれだけ抑えることができるのか。この問題は、長寿社会に生きる私たちすべてに関わる課題といえるかもしれません(※1、2)

 

※1 池谷敏郎『体内の「炎症」を抑えると、病気にならない!』三笠書房、2017年

※2  熊沢義雄『ガン、動脈硬化、糖尿病、老化の根本原因 「慢性炎症」を抑えなさい』青春出版社、2017年

次ページ慢性炎症は全身に「飛び火」する

※本連載は、川本徹氏の著書『死肪肝』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

死肪肝

死肪肝

川本 徹

幻冬舎メディアコンサルティング

沈黙の臓器、肝臓。 「気付いたときにはすでに手遅れ」を防ぐために――。 臨床と消化器がんを研究し、米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターでがん治療の最先端研究に携わった著者が、脂肪肝の基礎知識とともに肝…

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