本連載は、雑誌やウェブなど幅広い媒体で活動するベトナム在住のフリーライター・古川悠紀氏の著書、『ベトナムとビジネスをするための鉄則55』(アルク)の中から一部を抜粋し、経済成長著しいベトナムの地で、円滑にビジネスを行うために欠かせない知識やヒントを紹介します。今回は、ベトナムの一般的な「ビジネスアワー」などについて見ていきます。

一般的なオフィスアワーは全国共通で8~17時

Q.ベトナムの一般的なビジネスアワーを教えてください。

 

A.企業の勤務時間は8~ 17 時が一般的です。商業施設は、都市部を中
心に夜遅くまで営業しているところも増えてきました。

 

ベトナムの民間企業の一般的なオフィスアワーは、8〜17時で全国共通。工場では7〜16時、9〜18時などに変わることもあります。朝の7〜9時は都心と隣接するベッドタウンはどこもラッシュアワーとなり、バイクで大渋滞します。

 

一般の企業では12〜13時までが昼休み。ただし、ベトナムには昼寝の習慣があることを考慮しなければなりません。多くのベトナム人は、昼食を早々に取り終え、残った時間を昼寝に当てます。昼寝中に電話が鳴っても、電話を取らないこともあるので、この時間帯の重要な電話は避けた方がいいでしょう。

 

●商業施設・公共施設の営業時間

 

商業施設で最も早く営業を開始するのは市場と屋台です。朝5時過ぎにはすでに店が開き、市場はその日の食材を調達するベトナム人でにぎわっています。レストラン、スーパーマーケット、ショッピングモールの営業時間は店によって異なりますが、だいたい10〜22 時が目安。日本食レストランを含む多国籍レストランは14〜17時くらいは閉めている場合が多いです。ベトナム料理店はこの時間帯もたいてい営業しています。

 

ショッピングセンター内の店舗は直営店だけ営業開始時間が早く、テナントは1〜2時間後に開店するというパターンもあります。また、近年では深夜営業をする店が多くなり、レストランやバーでは深夜2時まで営業しているところもあります。24時間営業の店は、現状ではコンビニエンスストアと一部のファストフード店のみです。

 

銀行の営業時間は8〜16時前後。郵便局は窓口が8時に開いて16時30分〜17時に閉まります。銀行の一部店舗の窓口は土曜日は午前だけ営業、日曜日は休み。郵便局は店舗によっては土曜日と日曜日もフルタイムで営業しています。ただし、客がいないと早く窓口を閉めることもあります。

 

銀行・郵便局ともに昼休みは11 時30分〜13時30分ごろで、この時間は窓口は休止します。病院の診察時間はだいたい8〜18時。昼休みは12〜13時ですが、病院によっては医師を当番制にして昼の時間帯も診察しています。役所の営業時間は7時30分〜17時。11時30分〜13時30分は昼休みです。土曜日は午前のみで、日曜日は休みとなります。

有給は完全消化、残業も嫌うのがベトナム人の多数派

●休日と有給休暇

 

ベトナムの一般企業の休日は土曜日の午後と日曜日で、週休1.5日となります。工場では土曜日もフルタイムで勤務する週休1日の企業も多く見受けられます。日系企業は業種にもよりますが、週休2日制を採用しているところも多いです。ベトナム人の有給休暇の消化率はほぼ100%。12カ月勤務すると、1年で12日の年次有給休暇が付与され、12カ月未満なら、1カ月につき1日の有給休暇が与えられます。

 

有給休暇の取得予定日に就労させる場合は、労働法によると300%の割増賃金を支払わなければなりません。未消化分の有給休暇に対しては300%で買い取る義務が生じます。ただし、ほとんどのベトナム人は有給休暇以上の休みを取得するので、心配はいらないでしょう。

 

その理由は、ベトナムの祝日が非常に少ないからです。まとまった連休は旧正月と5月頭のメーデー前後しかないので、ベトナム人の多くは、帰省や旅行のために減給覚悟で有給休暇以上の休みを取得します。

 

●ベトナム人の時間感覚

 

ベトナム人は時間にルーズとよくいわれますが、「日本人は時間に厳しいのになぜ残業には緩いのか」と逆に皮肉をいわれます。日本人のように仕事が終わらなかったら残業をするのは当然と考えるベトナム人はごくわずか。

 

ベトナム人の1日は仕事が終わってから始まるといわれるように、彼らは平日の帰社後の時間を有意義に過ごすため、残業を嫌います。また、時間外労働には残業代をしっかりと支払わなければなりません。労働法は、150%の残業代を支払う義務を定めています。

 

ベトナム人は遅刻が多いことも事実ですが、まずは本人から理由を聞くことが大事。都市部でも交通インフラの整備が不十分なため、遅刻を余儀なくされることもあります。道路が陥没して遠回りしなければならなくなったり、前夜の雨で道路が冠水したり。毎月旧暦の1日と15日には、朝早くから供え物を買う熱心な仏教徒で店や寺院の前の道路が埋め尽くされ、それが原因で渋滞することもよくあります。

 

同じ社員が毎日遅刻をするのであれば、当人の意識の問題である可能性が高いですが、このように不可抗力で遅刻してしまう場合もあります。遅刻の罰則規定は書面にしておくことが肝要です。

本連載は、2016年6月21日刊行の書籍『ベトナムとビジネスをするための鉄則55』から抜粋したものです。その後の社会情勢等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

ベトナムとビジネスをするための鉄則55

ベトナムとビジネスをするための鉄則55

古川 悠紀

アルク

中国に代わる生産拠点として従来から注目を集めるベトナム。経済成長を続ける人口9000万の若い国は市場としても将来性に富み、日本企業の進出が着実に増えています。本書では、ベトナム人やベトナム社会に関する基礎知識、仕事…

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