あなたにオススメのセミナー
遺言書は法定相続に優先されるが覆されるケースもある
相続人同士で遺産配分を決めるには、相続人全員で「遺産分割協議」を行わなければなりません。遺言書の内容に従わず、「遺産分割協議」で遺産分割を行うには、以下のケースの場合、認められることがあります。
相続人全員が「遺産分割協議」に賛成した場合
相続人全員が遺言内容へ従うことに反対し、「遺産分割協議」に賛成すれば、相続人同士の話し合いで遺産配分を決めることができます。ただし、相続人が配偶者と兄弟姉妹なら、配偶者を含めた相続人全員が「遺産分割協議」に賛成しなければいけません。
遺言書が無効の場合
遺言書が法定通りの形式で書かれていない場合、その遺言内容は無効となります。法的に認められた遺言書は、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類です。
「秘密証書遺言」や法務局に預けていない「自筆証書遺言」は、開封前に家庭裁判所の検認を受なければなりません。検認とは、遺言内容の有効・無効を判断するのではなく、遺言書の形式、日付、署名等を確認し、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。
「公正証書遺言」は、公正役場で証人2名の立ち会いの上、遺言書作成の専門家である公証人によって作成されます。そのため、最も無効になりにくい遺言書と言えるでしょう。
ただし、その遺言書が被相続人の意思によるものかどうかも、有効・無効の判断ポイントとなります。たとえば、その遺言書が誰かに強制されたり、被相続人が認知症や寝たきり状態で作成されたりしたなら、相続人は無効を主張できます。家庭裁判所に遺言無効確認の調停を申し立て、相続人同士で話し合いますが、調停で決着しない場合は訴訟となります。
被相続人自身が遺言を撤回した場合
「先に作成した遺言を撤回する」という内容の遺言書が見つかった場合、先の遺言書は無効となります。遺言書の有効性は、遺言書に記された日付の新しいものが優先されます。
遺言書で指定された相続人が相続欠格・相続放棄の場合
「相続欠格」とは、犯罪をおかした相続人が相続権を失うことです。一度でも「相続欠格」になってしまうと、その人は相続人としての資格を永遠に剥奪されることになります。
「相続欠格」と混同されやすいものに、「相続排除」があります。被相続人を虐待や侮辱したことのある者を相続人から排除するため、被相続人自身が家庭裁判所に請求します。
また、遺言書で指定された相続人が自らの意思で「相続放棄」すれば、遺言書の内容は実行されず、ほかの相続人が話し合いで遺産分割することになります。「相続放棄」は、相続開始から3ヵ月以内に放棄したい相続人本人が家庭裁判所に申し出る必要があります。
なお、配偶者とは、入籍している法律婚の夫や妻を指します。しかし、冒頭でも述べたように、結婚観も次第に多様化しています。民法は国民生活に関わる法律ですから、今後も一部改正があるかもしれません。また、相続税法などの税制改正は毎年行われています。
相続に関して迷いが生じたときは、まずは相続税法に詳しい弁護士や税理士などの専門家に相談されることをおすすめいたします。
岡野 雄志
岡野相続税理士法人
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】