ハイテク産業が円安による利益を被る
恩典的円安の時代(※)、購買力平価から相当程度(3割以上)安い為替レートが定着し、日本の価格競争力に為替面からの恩典が与えられる時代が始まった。
※1980年代後半から2001年、および2009~2013年にかけて、購買力平価を大幅に上回る「懲罰的な円高」の時代が終焉し、世界経済における日本の価格競争力が復活する(≒恩典が与えられる)円安の時代。
懲罰的円高時代と同様に、今回も経済合理性とともに、覇権国米国の国益が鍵となる。米国は脱中国のサプライチェーンの構築に専念しているが、その一環として中韓台に集中している世界のハイテク生産集積を日本において再構築する必要性がでてくる。そのためには円安が必須となり、それは日本に恩恵を与える。
幸いにして、日本は半導体・液晶・TV・携帯電話・PCなどハイテクのコア・最終製品では一敗地に塗れたが、デジタルの周辺分野(センサー、アクチュエーター、部品、材料、装置)で差別化を図り高シェアを獲得している。
それらの製品1つひとつはニッチであり市場規模は必ずしも大きくないが、世界のハイテクサプライチェーンのボトルネックを抑えているともいえる。中国を除くハイテクのサプライチェーンを構築する際には、日本が鍵になることは明白である。
すでに失われたデジタルの中枢部分は、世界の半導体市場をけん引する台湾最大級の企業『TSMC』・台湾との連携で補完し、日本ハイテク産業の蘇生が進むだろう。懲罰的円高で起きたことと逆の連鎖が見込まれる。
1ドル130円台となった円安の最大の受益者は、円高の最大の被害者であったハイテク産業になるのではないだろうか。