円高で瓦解したハイテク産業集積…復活の鍵は日台協力
しかし今、日本が貿易赤字国に転落したことで、恩典的円安の時代に入っていくのではないだろうか。
すでに懲罰的円高は2014年頃より解消しており、日本産業・企業の復活は進行している。企業利益は史上最高、海外生産はすでにピークを越え低下し始めている。また生き延びたハイテク周辺産業において日本企業の改革・新ビジネスモデルが台頭している。
恩典的円安の時代とは、購買力平価から相当程度(3割以上)安い為替レートが定着し、日本の価格競争力に為替面からの恩典が与えられる時代である。
懲罰的円高時代と同様に、今回も経済合理性とともに、覇権国米国の国益が鍵となる。米国は脱中国のサプライチェーンの構築に専念しているが、その一環として中韓台に集中している世界のハイテク生産集積を日本において再構築する必要性が出てくる。そのためには恩典的円安が必須となる。
幸いにして日本には半導体・液晶・TV・携帯電話・PCなどハイテクのコア・最終製品では一敗地塗れたが、デジタルの周辺分野(センサー、アクチュエーター、部品、材料、装置)で差別化を図り高シェアを獲得している。
それらの製品一つひとつはニッチであり市場規模は必ずしも大きくないが、世界のハイテクサプライチェーンのボトルネックを抑えているともいえる。中国を除くハイテクのサプライチェーンを構築する際には、日本が鍵になることは明白ではないか。
米国はアジアでの安全領域日本にハイテク産業集積を再構築する必要性に迫られてくるはずである。すでに失われたデジタルの中枢部分は台湾との連携で補完し、日本ハイテク産業の蘇生が進む。懲罰的円高で起きたことと逆の連鎖が見込まれる。
円安の最大の受益者は、円高の最大の被害者であったハイテク産業になるのではないだろうか。
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
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