「繰り上げ受給」で住民税を非課税にする裏ワザ
「住民税を非課税にするには配偶者がいるほうが有利なんですね。」
森永先生「単身者も方法がないわけじゃない。年金を繰り上げ受給すればいいんだ。」
「繰り上げ受給すると、年金額は減ってしまうんでしょ?」
森永先生「だからいいんだよ。2022年4月からは、繰り上げ受給の減額率が1ヵ月当たり0.4%に圧縮される(それまでは、0.5%)ことになっているんだ。だから単身で年金を175万円受け取る予定の人が住民税非課税になろうと思ったら、年金を30ヵ月、つまり2年6ヵ月前倒しで受給すればいいんだ。」
■いつから年金を受け取るのが有利?
「ということは62歳で引退して年金を受け取ればいいんですか。」
森永先生「そう。体力があるうちにリタイアできれば、第二の人生を楽しむ時間が増えるしね。」
「この方法には落とし穴はないの?」
森永先生「実はあるんだ。年金額が12.0%減額になった状態が一生涯続くことになる。さらに将来の年金水準を考えると、さらに4割程度減の年金額が想定されるから、最終的に月7万7000円の年金で暮らせる家計を目指す必要があるんだ。」
「いくら単身でも厳しそうだなあ。」
「繰り下げ受給」「繰り上げ受給」の現状
政府は多くの人が75歳まで働き、年金の受給開始年齢も繰り下げることを奨励していますが、実際にどれくらいの人が繰り上げや繰り下げを利用しているのでしょうか。老齢厚生年金受給権者の繰り上げ、繰り下げ状況を見ると、2020年で繰り上げは0.5%、繰り下げが1.0%で、ほとんどの人が繰り上げも繰り下げも利用していないことがわかります(図表7)。22年4月からの繰り下げ年齢が75歳まで拡大しますが、果たして利用者は増えるのでしょうか。
■「繰り下げ」「繰り上げ」で年金額はどれくらい変わる?
年金の受給は原則65歳からですが、60歳から70歳の範囲で調整が可能です。65歳よりも前倒して受給開始する場合は繰り上げ受給、65歳以降に後ろ倒しする場合を繰り下げ受給と言います。
繰り上げ受給する場合には、年金の受取年数が長くなるため受給額は減額されます。たとえば、60歳まで繰り上げると本来の年金額から30%減額され70%の受給額となります。その金額が一生涯続くことになります。
一度、繰り上げ受給をしてしまうと、戻すことはできないので注意が必要。
一方で70歳まで繰り下げた場合、年金額は42%アップします。繰り下げ受給の年齢はさらに拡大する予定です。2022年4月からは最大75歳まで繰り下げが可能になり、年金額は最大184%にアップします。
森永 卓郎
獨協大学経済学部 教授
経済アナリスト