2022年3月分鉱工業生産指数・速報値について (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

生産用機械工業など8業種が上昇、生産は全体で2ヵ月連続前月比上昇

 

4月の生産予測指数は上昇見込み。基調判断5ヵ月連続「持ち直しの動き」

 

3月分一致CI前月差僅かに上昇か。判断は2月分改定値に続き「改善」に

 

 

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・3月分速報値・前月比は+0.3%と、世界的に新型コロナウイルス感染症拡大の影響が緩和した環境下、半導体需要の増加で半導体製造装置が増加するなどの需要増を反映し、2ヵ月連続で上昇となった。季節調整値の水準は96.5で、21年12月の96.6以来の水準である。前年同月比は▲1.7%で2ヵ月ぶりの低下である。

 

●3月分鉱工業生産指数では、全体15業種のうち、8業種が前月比上昇、7業種が前月比低下で、全体では上昇となった。福島県沖地震等の影響を受けて自動車工業などが低下したものの、新型コロナウイルス感染症拡大の影響緩和などで、半導体製造装置などの需要増で生産用機械工業が上昇、また新製品等の生産拡大により化学工業(除.無機・有機化学工業・医薬品)が上昇した。

 

●経済産業省の基調判断は20年7月分で「生産は持ち直しの動きがみられる」となった。8月分では、「生産は持ち直している」に上方修正された。その後、21年7月分まで、「生産は持ち直している」で据え置きになっていたが、8月分では、19年1月分・2月分以来の、「生産は足踏みをしている」に引き下げられ、9月分・10月分では判断が継続となった。11月分では「生産は持ち直しの動きがみられる」に上方修正され、12月分・22年1月分・2月分に続き、3月分も同じ判断になった。

 

●製造工業予測指数3月分は前月比+4.6%の上昇の見込み(年間補正後。先月発表された当初分では+3.6%)であった。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値では、3月分の前月比は先行き試算値最頻値で+1.1%の上昇になる見込みである。90%の確率に収まる範囲は▲0.9%~+3.1%になっていた。実際には、鉱工業生産指数の前月比が+0.3%の上昇になったが、これは製造工業予測指数を4.3ポイント下回る上昇率だが、一方で試算値最頻値にあと0.8ポイントと迫る上昇率になった。

 

●3月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比+0.5%と3ヵ月ぶりの上昇になった。前年同月比は▲2.5%と3ヵ月連続の低下になった。

 

●3月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲0.6%と2ヵ月ぶりの低下になった。前年同月比は+6.6%と7ヵ月連続の上昇となった。

 

●3月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比▲0.3%と3ヵ月ぶりの低下になった。前年同月比は+9.6%と7ヵ月連続の上昇となった。

 

●鉱工業全体の在庫循環の動きをチェックするために、縦軸に鉱工業在庫指数・前年比、横軸に鉱工業出荷指数・前年比をとった在庫サイクル図をつくると、20年10~12月期、21年1~3月期では「意図せざる在庫減局面」になっていた。4~6月期では「在庫積み増し局面」に入った。7~9月期では引き続き「在庫積み増し局面」となった。10~12月分では在庫が前年同期比+4.9%、出荷が前年同月比0.0%の伸び率になり、「在庫積み上がり局面」となった。21年1~3月期(速報値)では在庫が前年同期比+6.6%、出荷が前年同月比▲1.8%の伸び率になり、引き続き「在庫積み上がり局面」となっている。しかし、部材調達不足などによる生産の減少による影響が含まれていることなどから、もうしばらく動向を注視していくことが必要な局面であろう。

 

 

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると4月分は前月比+5.8%の上昇、5月分は前月比▲0.8%低下の見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、4月分の前月比は先行き試算値最頻値で+0.8%の上昇になる見込みである。90%の確率に収まる範囲は▲1.3%~+2.9%になっている。

 

●先行きの鉱工業生産指数、4月分を先行き試算値最頻値前月比(+0.8%)で延長、5月分を製造工業予測指数前月比(▲0.8%)で延長し、6月分を前月比横這いとすると、4~6月期の前期比は+1.1%の上昇になる。また、先行きの鉱工業生産指数、4月分・5月分を製造工業予測指数前月比(+5.8%、▲0.8%)で延長し、6月分を前月比横這いとすると、4~6月期の前期比は+6.1%の上昇になる。ウクライナ情勢や原油価格などの上昇どの懸念材料があるが、今のところ生産指数は、10~12月期の2四半期ぶり前期比上昇の後、1~3月期に続き、4~6月期も前期比上昇になる可能性が大きそうだ。

 

(アニマルスピリッツ指標)

●経済産業省は製造工業生産予測指数からアニマルスピリッツ指標を作成している。21年6月調査結果で、アニマルスピリッツ指標(生産活動マインド指標:DI)は10ヵ月連続のプラスの数値となり、企業の生産マインドは強気超の状況が続いていたが、21年7月~22年4月調査結果ではDIはマイナスになっている。22年4月調査結果のDIは▲12.2である。22年3月調査結果のDI▲10.5から悪化した。

 

 

(3月分の景気動向指数・速報値予測)

●3月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+0.6程度と3ヵ月ぶりの上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差プラスに寄与し、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数の5系列が前月差マイナスに寄与するとみた。

 

●3月分の一致CIは前月差+0.3程度と2ヵ月連続の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率、輸出数量指数の6系列が前月より改善している。耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の2系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

 

●3月分で景気の基調判断は、2月改定値に続き2ヵ月連続して、景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」になると予測する。予測通りだと3ヵ月後方移動平均の前月差は小幅だが5ヵ月連続上昇、かつ前月差はプラスになる。再び「足踏み」に下方修正になるための「3ヵ月後方移動平均の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1ヵ月、2ヵ月または3ヵ月の累積)が1標準偏差以上。かつ当月の前月差の符号がマイナス」という条件は満たさないとみられる。

 

●3月分の先行DIは33.3%程度と2ヵ月連続で景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、新規求人数、新設住宅着工床面積、日経商品指数の3系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がマイナス符号になるとみた。

 

●3月分の一致DIは25.0%程度と2ヵ月連続で景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列中、有効求人倍率、輸出数量指数の2系列がプラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列がマイナス符号になると予測した。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年3月分鉱工業生産指数・速報値について』を参照)。

 

(2022年4月28日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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