(※写真はイメージです/PIXTA)

経済成長する国、しない国にはどんな差があるのでしょうか? アメリカの経済学教師デーヴィッド・A・メイヤー氏の著書『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』(桜田直美訳、SBクリエイティブ)より、経済成長の基本を見ていきましょう。

「経済成長」とは何か?

「経済成長」とは、時間の経過とともに国民1人当たりの実質GDPが増加していくことだ。アメリカの場合、ほぼ毎年2%のペースで経済成長している。つまり、だいたい36年で実質GDPが2倍になるということだ。

 

それと同時に、アメリカの人口は毎年1%のペースで増加している。そこからわかるのは、アメリカの1人当たり実質GDPは1960年のほぼ3倍になっているということだ。

 

経済成長はして当たり前のものではない。まったく成長しない年もあれば、むしろ実質GDPが減少する年もある。そしてGDPの減少は、景気後退を意味する。

日本経済が天然資源大国・ロシアより伸びたワケ

■経済成長でもっとも大切な要素、「人的資本」

経済成長でもっとも大切な要素は「人的資本」だ。人的資本とは、人間が持つ教育、スキル、能力を資本とみなして投資の対象とする考え方だ。

 

人的資本への投資が大きい国は、同じような条件で人的資本への投資が少ない国に比べ、経済成長が大きくなる傾向がある。

 

人的資本の開発でもう1つ欠かせない要素は、個人に私有財産を持つ自由があることと、それを手に入れる能力があることだ。個人が自由に職業を選び、私有財産の利益を享受することができる社会は、個人の自由が認められない社会よりも生産性が高い。

 

たとえば、ドイツが東西に分かれていた時代がどうだったか考えてみよう。個人の自由が認められていた西ドイツのほうが、全体主義の東ドイツよりもはるかに生産性が高かった。現代でも、韓国と北朝鮮で個人の生産性の平均値を比べれば、韓国のほうがはるかに高い。韓国では自由に経済活動ができるので、もっと豊かになるためにもっと生産するからだ。

 

■人口が多いと人的資本を育てやすいが…

国が人的資本を手に入れるには、何よりもまず「人間」を確保しなければならない。経済が成長するためにも、人口が増えることが重要だ。そして人口の増加には、生産性の向上も伴わなければならない。人口が多ければ、GDPも増加し、さらに技術革新も増える。人間の数が多ければ、生産に携わる人数も増えるからだ。国の人間が増えるほど、未来の起業家も増える。起業家の存在は、経済成長を推進するエンジンの1つだ。

 

一方で、天然資源が豊富すぎると、かえって人的資本が育たないことがある。政府が天然資源の開発と輸出にばかり熱中して、国民への投資を怠るからだ。この現象がよくわかるのが、ロシアと日本の比較だ。一見したところ、世界一の天然資源の埋蔵量を誇るロシアのほうが、天然資源のほとんどない日本よりはるかに豊かだと思うかもしれない。しかし人的資本への投資は、ロシアより日本のほうがはるかに多い。日本がロシアよりも経済成長できたのはそれが理由だ。

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※本連載は、デーヴィッド・A・メイヤー氏の著書『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』(SBクリエイティブ)より一部を抜粋・再編集したものです

アメリカの高校生が学んでいる経済の教室

アメリカの高校生が学んでいる経済の教室

デーヴィッド・A・メイヤー 著
桜田直美 訳

SBクリエイティブ

金融教育の先進国・アメリカでは、高校生のからお金の流れと世の中の仕組みについて学校で勉強する。 アメリカの高校生が学んでいる、「日本の学校では教えてくれない」一生ものの経済のきほんの授業を一冊に凝縮!

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