テンバガー候補を見つける3つの条件
リンチさんは当時、1400もの銘柄に投資していたといわれます。
「そんなに!?」「多すぎる!」と感じる人もいるでしょうが、ポイントは投資先を分散することです。仮に10社に均等に投資した場合、そのうちの9社の株が値下がりしたとしても、残り1社の株が10倍になれば損はしません。
また、保有株がたくさんあれば、そのうちの1~2社が倒産したとしても、投資額全体に対する影響は小さくなります。10社のうち1社が倒産し、株価が0円になったとしても、全体に与える影響はマイナス10%。残り9社のどれかがテンバガー株になれば、損失を埋められるどころか、収支は大きくプラスになります。中小型成長株の投資ではここがポイントです。
テンバガーの可能性がある株を探してとりあえず買ってみる。1つの銘柄に資金を集中させるのではなく、複数の銘柄に幅広く目を向けながら、ちょっとずつ買ってみる。こうして、テンバガー株の候補数を増やしていくと、資産全体のリスクを抑えたポートフォリオ(複数銘柄のパッケージ)ができます。
現実的には、リンチさんのように1400もの銘柄を買うのは難しいでしょうが、20社くらいには分散できるかもしれません。そのためにも、テンバガー(10倍)とまではいわないまでも、ツーバガー(2倍)、スリーバガー(3倍)くらいを狙える中小型成長株を1つでも多く探し出さなくてはいけません。
では、リンチさんはどうやってテンバガー株を見つけたのか。
リンチさんは、「中小型株と業績回復株を買いなさい」と提言しています。この2タイプの株に目を向けることが、大きなリターンをつかむ第一歩ということです。
本連載では、成長力があり、テンバガーも夢ではない中小型成長株を見つける条件として、以下の3点に注目します。
①中小型株
②成長性
③オーナー企業
【時価総額300億円以下を探す】
中小型株は、売上、利益、従業員数、拠点数などではなく、時価総額で判断します。時価総額は企業価値ともいわれ、発行済み株式の数と株価を掛けて算出します。
たとえば、発行済み株式数が3000万株であれば、株価1000円で時価総額300億円。1000円の株価が2000円になればツーバガー、3000円になればスリーバガー、1万円になればテンバガーです。
時価総額が小さいほど、何倍にもなる可能性があります。ただ、その点にこだわりすぎると企業の選択肢が狭くなります。小さいほど大化けの可能性はありますが、本連載では、時価総額300億円を基準に探すこととします。
【前期からの増収率20%以上を探す】
中小型株を見つける条件の2つ目は企業の成長率。成長率の高さは、「増収率」で判断します。増収率は、売上が前期と比べてどれくらい増加しているかを表します。
四季報には、各年度の売上額は載っていますが、前期と比較した増収率(減収率)は記載されていません。そこで、増収率を電卓で計算します。Jブロックに記載されている【業績】の数字を使います。
増収率について、東証の上場企業全体を見ると、今期の平均は8.8%、来期は3.4%(四季報の3ページで確認できます)。これを踏まえると、前期からの増収率が20%もあれば、その会社は十分に成長力があるといえます。増収率20%が4年続けば、4年後その会社の売上は約2倍になります。
本連載では、それくらい大きな成長力をもつ企業を探すために、前期・今期の増収率が20%以上、今期・来期の増収率(予想)15%を基準に探します。
【オーナーが大株主3位以内にいるか?】
オーナー企業であることも中小型成長株の重要な条件です。
オーナー企業は、創業者や社長が会社を所有し、経営権をもっているのが強みです。経営の意思決定を自分でできるため、時代の変化に迅速に対応できます。
成長力を高め、速いスピードで規模や事業を拡大していくためには、これが重要なポイントとなります。実際、過去のテンバガー銘柄を分析してみても、8割ほどがオーナー企業か、それに近い企業でした。
その背景を踏まえて、本連載では、創業者、創業者の家族、家族の資産管理会社などが、大株主の3位までに入っている企業をオーナー企業、またはそれに近い企業とします。
以上の3つが中小型成長株の条件です。
これらの条件に合う企業を四季報から探していくと、どのような銘柄が浮かび上がってくるのでしょうか? 次回は筆者が探し出した「中小型成長株」の実例を解説します。
渡部 清二
複眼経済塾 代表取締役塾長
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