(※写真はイメージです/PIXTA)

経済について知っておくべきことの一つは、「自発的な取引は買い手と売り手の双方にとって利益になる」ということです。アメリカの経済学教師デーヴィッド・A・メイヤー氏の著書『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』(SBクリエイティブ)より、「自由貿易」を中心に、取引の基本を見ていきましょう。

なぜ国家は「貿易をやりにくくする措置」を行うのか?

ときに国家は、貿易に関税や制限をかけたり、さらには完全に禁止したりすることがある。自発的な取引が双方にとって利益になるなら、なぜ国はこんなことをするのだろうか?

 

それは、たとえ自発的な取引が双方にとって利益になり、その利益が社会全体に拡散するとはいえ、ある特定の集団だけがコストを負担することもあるからだ。

 

自分の産業を守りたい、税収を上げたい、環境を守りたいという強い思いがある人は、関税や規制で貿易を制限しようとするだろう。ときには社会変革を起こす、他国を罰するという動機で貿易を制限することもある。このように貿易をやりにくくする措置は「貿易障壁」と呼ばれ、具体的には「関税」、「割当制」、「禁輸」などの方法がある。

「関税」とは、貿易にかける税金

関税とは貿易にかけられる税金だ。政府が税収を増やすために関税をかけることもあれば、ある特定の産業を保護するために関税を利用することもある。外国との競争にさらされている産業で働く人たちは、関税で守ってほしいと議会に働きかけようとするかもしれない。

 

関税にも欠点はある。特定の産業を保護することが目的の「保護関税」は競争を阻害し、ムダや非効率の原因になることが多い。税収を目的とした「歳入関税」も、関税による値上がりによって消費者がその製品を買わなくなり、結果的に歳入が減るという事態になることもある。輸出品に関税をかける「輸出関税」によって、その製品を生産しようとする人がいなくなるかもしれない。

 

イラスト:ヤギワタル 出所:デーヴィッド・A・メイヤー著『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』(SBクリエイティブ)より
【図表】関税って何だろう? イラスト:ヤギワタル
出所:デーヴィッド・A・メイヤー著『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』(SBクリエイティブ)より

貿易量を制限する「割当制」

■目的は「国内生産者の利益を守ること」だが…

割当制とは、貿易量に制限を設けることだ。

 

ドイツと日本の自動車会社は、アメリカ国内に工場を建設するという方法で、アメリカが決めた輸入割当制を回避することに成功した。アメリカの自動車会社は国内での競争にさらされ、さらに外国の自動車会社が組合の力が弱い州に工場を建設したために、労働組合も打撃を受けることになった。

 

割当制には他の問題もある。政府にとっては、税収の増加にはつながらないが、責任だけは大きくなるのが割当制だ。割当を回避するために密輸が増え、その結果として闇市場(ブラックマーケット)が誕生したら、政府は規制しなければならない。

 

それに加えて、外国の会社が、国内のライバル会社との競争を回避するために、割当制を悪用することもある。たとえば、アメリカがドイツ製の自動車の輸入台数を制限しているとしよう。あるドイツの自動車メーカーがこの割当いっぱいまで輸出したら、他のドイツの自動車メーカーはアメリカに輸出できなくなってしまう。

次ページ他国との取引を禁止する「禁輸」

※本連載は、デーヴィッド・A・メイヤー氏の著書『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』(SBクリエイティブ)より一部を抜粋・再編集したものです。

アメリカの高校生が学んでいる経済の教室

アメリカの高校生が学んでいる経済の教室

デーヴィッド・A・メイヤー 著
桜田直美 訳

SBクリエイティブ

金融教育の先進国・アメリカでは、高校生のからお金の流れと世の中の仕組みについて学校で勉強する。 アメリカの高校生が学んでいる、「日本の学校では教えてくれない」一生ものの経済のきほんの授業を一冊に凝縮!

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