(※写真はイメージです/PIXTA)

円安が止まりません。かつては「円安=景気にいい」とされていましたが、最近では傾向が異なり、企業のビジネス形態の変化や、輸入品の値上がりによる個人消費の縮小なども影響もあることから、円安の景気への影響は「ニュートラル」といったところでしょう。しかし一方で、株価を押し上げる力として働く可能性があります。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

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円安が景気へ及ぼす影響は「限定的」

かつては「円高は景気に悪く、円安は景気にいい」といわれていました。しかし、最近はそうでもないようです。円安になっても企業は輸出を増やすわけではなく、「売れるところで作る現地生産」に励んでいることが主因です。

 

それ以外にも、円安で輸入品が値上がりして個人消費を冷やす効果などが見込まれますので、円安の景気への影響はニュートラルといったところなのかもしれません。詳しくは拙稿『「20年ぶりの円安」そろそろシャレにならなくなってきたが…今後の日本経済を予想 』)をご参照下さい。

 

景気への影響はニュートラルでも、円安は株価を押し上げる力として働く可能性が高いでしょう。株価を動かす要因は多様ですから、円安だと必ず株価が上がるとはいえませんが。

企業収益への影響はプラス、海外資産の価格は上昇

日本は、輸出と輸入が概ね同額ですから、円安になって輸出企業がドルを高く売れた分と輸入企業がドルを高く買わされた分は概ね同額です。しかし、輸出企業の利益はそのまま輸出企業のものとなる一方で、輸入企業の費用増は一部が消費者に転嫁されるでしょうから、企業部門全体としての利益は増えるはずです。

 

それ以外にも、企業が海外から受け取る利子や配当等々が円安になると自動的に増えるでしょう。日本企業は積極的に海外現地生産をしているので、海外子会社から巨額の配当収入や知的財産権使用料を得ています。これが自動的に増える効果は大きいはずです。

 

企業の損益面のみならず、企業が海外に持っている資産の価格が上がりますから、企業の決算には表れないとしても「含み益」が増えるとすれば、それは投資家の株式購入意欲を高めるはずです。

 

含み益を持った企業は、その財産を売れば多額の利益となるでしょうし、売らずに工場設備を用いて生産活動をおこなえば、得られた利益が配当され、日本に持ち帰って来たときに多額の利益となるはずです。

 

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