中国株ADRは過去1年余りで75%下落
■米中対立が激化するなか、米国市場に上場する中国企業の米国預託証券(ADR)が低迷しています。昨年2月以降、中国企業のADRの値動きを示す「ナスダック・ゴールデン・ドラゴン・チャイナ指数」は、米中当局の規制強化を嫌気し、大幅に下落しました。
■21年12月には米証券取引委員会(SEC)が米国に上場する外国企業向けの新規則を設け、当局検査を受け入れない場合、24年までに上場廃止になる可能性が浮上したため、下げが加速しました。
■その後、同指数は3月14日に、SECが上場廃止の可能性がある中国企業5社を追加で公表したことを受け、13年7月以来の安値を付けました。21年2月の高値からは75%の下落となりました。
中国政府の市場支援策への期待で反発
■これに対し、劉鶴副首相主宰の国務院金融安定発展委員会が3月16日に開いた会合で、市場に有利な政策を積極的に打ち出していく方針を示すと、地合いが一変し、同指数は急反発しました。さらに、中国当局は4月2日、海外上場に関する機密保持規則の改正を提案し、現地検査は主に中国の規制当局が実施すべきだとする要件を規則修正案で削除したことを明らかにしました。これを受けて、中国企業の米国上場廃止への懸念が和らぎ、同指数は持ち直しています。
中国当局は会計監査問題で米国に歩み寄り
■中国政府は3月に開かれた全人代で2022年の経済成長率目標を「5.5%前後」と、市場予想よりも高めの目標を掲げ、減税など景気対策を打ち出しました。この背景には、5年に一度の秋の党大会をにらみ、3期目入りをめざす習近平総書記の支持固めに、経済の安定成長が最優先事項になっていることがあります。こうした状況下、中国当局は、会計監査をめぐる中国企業のADR問題がきっかけとなり、米中対立の一段の悪化による景気減速や、中国株に悪影響が及ぶような状況を避けるため、これまでの主張を取り下げ、会計監査に関する法的障害を取り除いたと考えられます。このため同問題については中国当局が米国に歩み寄ろうとする姿勢が続くとみられます。
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(2022年4月12日)
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