(※写真はイメージです/PIXTA)

一般の方が手書きで遺言書を作成する場合、せっかく書いたのに、「末尾の言葉選び」を間違えたせいで相続手続きに使えなくなってしまった、というケースが少なくありません。ここでは司法書士法人さえき事務所所長・佐伯知哉氏が、自筆証書遺言にありがちなまずい書き方について解説します。一般の方がやりがちな失敗を知ることで、正確な遺言作成の手助けになりますので、ぜひ最後までお読みください。

せっかく書いた遺言書が相続手続きに使えない!?

自分が亡くなったら、自分の財産を特定の誰かに渡したい…そう考えたときに作成するのが、遺言書です。不動産を持っている人であれば「私の不動産を妻Aに相続させる」というふうに書きます。

 

ただ、一般の方が手書きの遺言書(いわゆる自筆証書遺言)を作成するとき、非常にまずい書き方をしているケースが多々あります。まずはどのような書き方がまずいのかを確認してから、次にその解決策を見ていきましょう。

「譲る」「託す」「任せる」はNG表現

一般の方がよく間違う遺言書の末尾として、非常に多いのが「私の不動産を妻Aに譲る/託す/任せる」という表現です。

 

「譲る」であればまだ、譲渡の“譲”ですから「遺産を特定の誰かに“あげたい”のだな」とわかり、手続きに特段問題なく使えるパターンも多いのですが、「託す」「任せる」だと、その人に遺産をきちんと承継させたいのか、あるいは管理を任せたいのかがわかりません。

 

せっかく遺言を書いても、明確に意志が伝わらないと手続きに使えない場合があります。

 

遺言書は「書いて終わり」ではありません。遺言書は、遺言者が亡くなった後に相続人がその内容を用いて不動産の名義変更を行ったり、金融機関での相続手続きに使ったりなど、「遺言者が亡くなった後の手続き」に使うものです。そのときに使える内容にしておかないと意味がない場合があるというのは、非常に注意を要する部分です。

 

繰り返しますが、一般の方の自筆証書遺言では「譲る/託す/任せる」という書き方になっているケースが非常に多いです。公正証書遺言であればこうした問題は起こらないと思いますが、まだ遺言書を書いていない方は注意してください。すでに書いた方であれば遺言書を見直していただいて、もしものときは、これからお伝えする表現に修正していただければと思います。

こう書けば大丈夫!遺言書のOK表現

では、具体的にどのような表現にすればよいのでしょうか。これは非常にシンプルです。

 

遺産を承継させたい相手が相続人であれば「相続させる」、相続人以外(生前お世話になった方など)であれば「遺贈する」と書けばOKです。

 

このように書けば誤解のしようがなく、明確な意思表示となります。

 

■相続人に「遺贈」、相続人以外に「相続」と書いたらどうなる?

ちなみに「遺贈」は、相続人に対して行うことも可能です。先ほど、継承させる相手が相続人であれば「相続させる」と書くようにと説明しましたが、実は「XX(相続人)に遺贈する」と書くこともできるのです。

 

ただし「相続させる」と「遺贈する」とでは法律的な意味あいが変わります(複雑なので本稿では割愛しますが、「遺贈」では被相続人が亡くなったときに贈与することを差す一方、「相続」は被相続人が亡くなったら遺産が自動的に相続人へと流れるイメージです)。

 

しかしながら、相続人に対して「遺贈する」と書いてしまうと、相続登記などで余分な手間がかかる場合もあるため、あえて遺贈にする必要はありません。シンプルに「相続させる」と書くのがよいかと思われます。

 

逆のパターンとして、相続人以外の人に対し、誤って「相続させる」と書いてしまう場合もあるかもしれません。相続人以外の人に「相続」させることはできないため、この場合は「遺贈」として扱われます。

 

先ほど「相続人には“相続”させる」、「相続人以外には“遺贈”する」と書くよう説明しましたが、実際のところ、とにかく「相続させる」と書いておけば、相続人には「相続」させられますし、相続人以外には「遺贈」扱いになるわけです。

 

つまり、最もシンプルなのは「相続させる」と書くことです。最悪、この一択だけ覚えておけばいいと言うこともできるでしょう。

 

<まとめ>

× 「譲る」「託す」「任せる」と書かない

〇 相続人には「相続させる」

〇 相続人以外であれば「遺贈する」

 

【動画/語尾一つで相続手続きに使えなくなる?遺言書の語尾に気を付けよう!】

 

佐伯知哉

司法書士法人さえき事務所 所長

 

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