『カムカム~』に見るバズりの仕掛けを検証
■『カムカム~』のバズり要素一覧
①テーマが誰にでも(あるいは注目してもらいたい層にとって)身近であること。
ドラマの内容は波乱万丈で意外性だらけだが、主人公の生きる環境には多くの人が郷愁を感じる身近さがある。
最初のヒロインのタームでは、戦没者や生き別れになった近親者のエピソード。進駐軍のこと、さらに今では信じられないような家族制度やしきたりの話等々。
真ん中のヒロインが演じる高度成長期時代では、ジャズの流行や当時のファッションといった現象の数々。
現代に近い時代を演じる三番目のヒロインは、甘酸っぱい失恋や先行きの定まらない自分への葛藤といった誰もが経験してきた甘酸っぱい思い出が散りばめられています。
②広告・宣伝色がない投稿。
NHKの番組なので広告色は元々ない。
③意外性のある内容。
劇中に面白いほど古い商品名や番組名のパロディが登場する。
「NHKの番組なので広告色はない」と述べましたが、実はこのドラマには過去に実在した映画やドラマの名前や商品名を想起させるパロディが頻出します。
たとえば劇中登場する映画名『破天荒将軍』は『暴れん坊将軍』、『金太郎侍』は『桃太郎侍』を彷彿とさせます。クリスマスシーズンに流れるCM音楽の定番中の定番である山下達郎さんの「クリスマス・イヴ」に載せて、そのCMに出演した深津絵里さん(『カムカム~』の二番目のヒロイン)がさりげなく歩いてくるシーンがあったり……。
ほかにもかつて大ヒットしたコミックや電気製品、お菓子などの商品名のパロディだとすぐわかるような体裁で、次々と視聴者を楽しませます。
もう、これでは話題にせずにはいられなくなるでしょう。
④有益性がある内容。
かつての貴重な映像が数々登場。
これを有益性と言うには無理があるかもしれませんが、パロディのみならずNHK制作の番組に関しては連続テレビ小説の第一作目や『おしん』等、尺は短いものの数作本物の映像が流れています。また、かつて流行した歌謡曲も多数盛り込まれています。
そしてこのドラマは「ジャズ」がひとつの軸になっているのですが、あの、巨匠・渡辺貞夫さんの映像まで登場しました!
⑤議論になりやすい話題。
役名表記やドラマの随所に仕掛けがあり、つい「あれ気づいた?」と人に話したくなる。
登場人物は、ストーリーがある程度進行するまで役名が「名前」ではなくニックネーム的な表記でオープニングで主題歌とともに出てきて、どんな役柄なのか、筋書きの展開にどう影響するのかと、視聴者の期待感をそそりました。
特に、最終回間際には、最初のヒロインがその後どうなったのかで話題沸騰となりましたが、新しい出演者の役名表記がなんとも意味深長で「実は最初のヒロインの現在の姿では?」と推理する人が続出。役名が気になってチャンネルを変えられなくなった方も少なくないと聞きます。
二番目のヒロインの結婚相手となったオダギリ・ジョーさん演じる役柄は当初「宇宙人」と表記され、さらに三番目のヒロインの交際相手は「ぶっきらぼうな男」の表記でスタート。
ご近所の酒屋さんの主人を演じるおいでやすこがの小田さんは「キレる芸風」のお笑いで知られていますが、彼の前掛けには「キレの良い店」と印刷されていました。
三番目のヒロインがよく訪れる蕎麦屋さんのメニューもよく見ると、登場人物をもじったような品名が並び、思わず笑ってしまいます。
三世代にわたる物語ですが、周囲の関係者も何組か親子数世代で登場しており、それが親を演じた俳優さんが子どもの成長後を演じるといった演出も楽しめます。
⑥エンターテインメント性がある。
連続テレビドラマ小説としては初(あるいは初に相当)の試みが仕掛けられた。
母娘三世代の100年物語を描いているという点が、まず朝ドラ史上初です。
2番目のヒロインである深津絵里さんが十代からアラフィフまで演じます。
この2点を筆頭に、「え!」と驚かされる演出が多いのです。広報活動でも「初」というのはたいせつなキーワードですから、こうした演出が効果を発揮していることはご理解いただけるでしょう。