2022年3月調査 日銀短観 (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

大企業・製造業・業況判断DI+14と3ポイント悪化、非製造業は+9で1ポイント悪化

 

22年3月の調査対象企業見直しで、21年12月調査のデータは変更されている

 

企業の物価見通し、1年後の販売価格+2.1%、同・物価全般+1.8%に上昇

 

 

●3月調査日銀短観では、大企業・製造業・業況判断DIが+14と12月調査の+17(旧データは+18)から悪化した。短観3月調査の調査期間は2月24日から3月31日である。ロシアのウクライナ侵攻の影響で原材料価格が上昇したことの影響などが懸念される状況だ。

 

●大企業・製造業で「悪い」と答えた割合は19年12月調査では12%だったが、新型コロナウイルス感染拡大のため、20年3月調査では19%と増加し、6月調査で41%まで大きく増加した。しかし一転改善に転じ、9月調査34%、12月調査22%、21年3月調査14%、6月調査で9%まで連続して低下し9月調査・12月調査でも9%と横這いだった。しかし、22年3月調査では10%と7期ぶりに悪化した。

 

 

●3月調査の大企業・製造業の業況判断DI+14は12月調査の「先行き」見通し+13を1ポイント上回り、足元の景況感は悪化したものの、先行き予想を上回ったことになる。底堅さが感じられる数字である。

 

●大企業・製造業の「先行き」業況判断DIは+9と「最近」の+14から5ポイントの悪化が見込まれている。「良い」と「悪い」の割合が減り「さほど良くない」が増えている。ウクライナ情勢、原材料価格の高騰、感染力が強いと言われる新型コロナウイルス・オミクロン型・BA.2の感染状況などの不透明さなどがマイナス材料になっていると思われる。

 

●3月調査の22年度の想定為替レートは111円93銭で、足元の実際の為替レート1ドル=122円台よりかなり円高水準である。

 

●大企業・非製造業・業況判断DIでは、前回12月調査で+10のプラス(当初は+9)だったが、今回3月調査では1ポイント悪化し+9になった。前回12月調査の「先行き」見通し+9と同水準で、足元の景況感が先行き予想通りやや悪化したということになる。3月21日まで発令されていたまん延防止等重点措置の影響などがマイナスに働いたとみられる。

 

●大企業・非製造業で「悪い」と答えた割合は17年9月調査19年12月調査まで4%または5%で安定的に推移していたが、20年に入り悪化、20年3月調査で一気に8ポイント悪化し13%に、6月調査では19ポイントも悪化し32%になった。しかし、9月調査27%、12月調査21%、21年3月調査20%、6月調査と9月調査で17%となっていた。12月調査では13%(当初は14%)まで低下した。22年3月調査では14%へと7期ぶりに上昇した。

 

●大企業・非製造業・業況判断DIの「先行き」は+7と「最近」の+9から2ポイントと僅かな悪化が見込まれている。「悪い」と答えた割合は「先行き」は10%で「最近」の14%から4ポイント減少している。その中で業況判断DIが悪化するのは、先行きが不透明で「良い」の割合も減り「さほど良くない」が増えているからだ。

 

●中小企業・製造業の業況判断DIは今回3月調査で▲4と12月調査の▲1から3ポイント悪化した。12月調査の「先行き」見通しでは▲1とみていたので、足元の景況感は3ポイント予測よりも悪かったという結果になった。

 

 

●一方、中小企業・非製造業の業況判断DIは、前回12月調査で、▲3だったが、今回3月調査では▲6まで悪化した。12月調査時点の「先行き」▲6と同水準で、予測通り悪化したということになった。

 

●中小企業・製造業の「先行き」の業況判断は▲5と「最近」▲4から1ポイント悪化する見通しである。また、中小企業・非製造業は「先行き」を慎重にみる傾向があり、▲10と「最近」▲6から4ポイント悪化する見通しである。

 

●全規模・全産業の業況判断DIは、過去最悪の98年9月調査の▲48に近かった09年3月調査の▲46を底に上昇し、東日本大震災による一時的落ち込みなどを挟んで13年9月調査で+2と07年12月以来のプラスになり、以降プラスが続いていたが、20年3月調査で▲4と19年12月調査の+4からマイナスに転じ、6月調査では▲31と2ケタのマイナスになった。しかし、9月調査▲28、12月調査▲15、21年3月調査▲8、6月調査で▲3、9月調査で▲2、12月調査で+2と6期連続で改善しプラスに戻った。但し、22年3月調査では0と7期ぶりに悪化した。「先行き」は▲3と3ポイント悪化の見通しだ。まだ収束が見通せない新型コロナウイルスの動向に加え、ロシアのウクライナ軍事侵攻の行方、エネルギー価格・食品価格の高騰などが、先行きの景況感に影を落としている。

 

●今回3月調査の雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)では大企業・中堅企業・中小企業と全産業・製造業・非製造業のすべての組み合わせがマイナスで、12月調査からの限界的な変化としては不足感が増した。先行き見通しでも変化幅がすべての組み合わせがマイナスで、不足感が拡大している。雇用に関しては、企業の判断では、雇用の過剰感が増しているというような状況ではないことがわかる数字になった。

 

●3月調査の21年度の大企業・全産業の設備投資計画・前年度比は+5.9%、中小企業・全産業の設備投資計画・前年度比は+4.3%の増加である。全規模合計・全産業の設備投資計画・前年度比は+4.6%となった。22年度の大企業・全産業の設備投資計画・前年度比は+2.1%、中小企業・全産業の設備投資計画・前年度比は3月調査ということで弱く▲11.4%である。全規模合計・全産業の設備投資計画・前年度比は+0.8%となった。

 

●また、GDPの設備投資の概念に近い、ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベースの全規模合計・全産業の設備投資の21年度の前年度比は+5.2%で、22年度の前年度比は+3.2%で、プラスの計画にはなっている。

 

●3月調査の販売価格判断DI(「上昇」-「下落」)、仕入価格判断DI(「上昇」-「下落」)では大企業・中小企業と製造業・うち素材業種・うち加工業種・非製造業のすべての組み合わせが最近・先行きともプラスである。企業の判断では、価格判断は上昇超となっていることがわかる数字である。

 

●「企業の物価見通し」では、全規模合計・全産業でみて、販売価格の見通しでは、1年後が+2.1%と前回12月調査の+1.2%から0.9ポイント上昇した。3年後が+2.7%と前回から1.0ポイント上昇、5年後が+3.2%と前回より0.9ポイント上昇した。また、物価全般の見通しでは、1年後が+1.8%と前回より0.7ポイント上昇、3年後が+1.6%と前回より0.3ポイント上昇、5年後が+1.6%と前回より0.2ポイント上昇となった。今回の短観の企業の物価見通しは上昇率見通しが全般的に高まるという内容になった。

 

 

●日銀がある本石町の短観発表時点の天気と、日銀短観の内容が一致する傾向がある。全規模・全産業の業況判断DIが12月調査の+2(8期ぶりプラス)から今回3月調査は0に低下した。12月調査は北風が強いものの天気は「晴れ」に見合った内容だった。今回3月調査は雨の事前予報もあったものの「曇り」だった。経済環境は新型コロナウイルスの感染者にリバウンドの兆しがみられ、ロシアのウクライナ侵攻情勢の先行きも不透明など内憂外患の下、悪化しながらも底堅さが感じられる内容だった。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年3月調査 日銀短観』を参照)。

 

(2022年4月1日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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