(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供するデイリーマーケットレポートを転載したものです。

日銀オペを受けて円が急落

■対米ドルの円相場は年明け以降3月上旬まで、概ね1ドル=114円~116円を中心とするレンジ内で推移していましたが、3月11日にドルの上値抵抗線として意識されていた116円前半の水準を上抜けると、ドル買い・円売りの動きが一気に加速しました。円は3月28日に、2015年8月以来の125円台を一時付けるなど、急激なドル高・円安が進行しています。

 

■28日に円が急落したのは、日銀が「指し値オペ」を繰り返す「連続指し値オペ」の実施を発表し、大規模な金融緩和の継続姿勢が市場に改めて認識されたためと思われます。米連邦準備制度理事会(FRB)が3月に利上げを実施し、さらに金融引き締め姿勢を強めるなか、日米金利差が一段と拡大するとの見方もあり、円売りが加速しました

 

(注)データは2020年1月1日~2022年3月28日。 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
ドル円相場と日米金利差 (注)データは2020年1月1日~2022年3月28日。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

経常収支が赤字傾向、有事の円高は不発

■円安の背景には、日米の金利差拡大のほかに、日本の経常収支が、原油高による貿易赤字を主因に、昨年12月、今年1月と、2カ月連続で赤字になるなど、円売り需要が増加しつつある点もあります。資源を輸入に頼る日本の貿易収支の大幅な赤字が定着すれば、海外投資からの配当や利息などからなる所得収支の黒字では埋め切れず、経常赤字も定着することで、中長期的な円安要因となる可能性があります。

 

■ロシアによるウクライナ侵攻で地政学リスクが高まっているものの、今局面では、安全通貨とされる円は多くの他通貨に対しても下落しており、有事の円買いは起こっていません。地政学リスクの顕在化に伴い、地理的な観点や資源需給の観点から通貨の選別が進み、単純にはリスクオフの円高とならなかった模様です。

ファンダメンタルズから円安地合いが続く可能性

■足元の急激なドル高・円安は、やや行き過ぎ感が強く、いったん調整も見込まれます。しかしながら、米国では今年金融政策の引き締めが進むとみられる一方、日本では当面金融緩和が維持されるとの見方から、日米で金融政策の方向性が異なる見通しです。日本の貿易赤字が定着しつつあることを踏まえると、中長期的には需給面で円売り圧力が強まることも想定され、円安地合いが続く可能性があります。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『円が一時125円台に急落、円安が加速…日米金利差拡大と貿易赤字から「円安地合い」が続く可能性』を参照)。

 

(2022年3月30日)

 

関連マーケットレポート

2022年3月24日 121円台をつけてきたドル円 ~今後の見通しについて

2022年3月16日 リスクオフの円高が進まない理由

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