(※写真はイメージです/PIXTA)

経済アナリストの森永卓郎氏は、様々なデータから、30年後、平均的サラリーマン世帯だった夫婦2人の年金は「月額13万円」にまで減ると推計しています。金融庁の報告によると、現在、年金だけで暮らす高齢夫婦世帯の生活費は月26万。将来、年金のみで暮らそうと思えば支出を半減させなくてはならず、人並みの暮らしができないどころか相対的貧困に陥ることは明らかです。安泰の老後を迎えるには、どうすればよいのか。今回は「働き続ける」という選択肢について考えていきましょう。

■平均的な厚生年金受給者なら、勤労収入「月5万4166円」まで非課税

少し複雑なので、具体例で考えてみよう。2019年の厚生年金の平均は175万円だから、公的年金等控除と基礎控除を引いても所得が発生する(175万円–110万円–48万円=17万円)。このため、調整控除が適用されて、年間65万円(給与所得控除55万円+調整控除10万円)までの給与所得には所得税や住民税がかからない。

 

一方、国民年金の場合は、平均受給額が67万円だから、公的年金等控除の範囲内となり公的年金の所得はゼロとなる。このため調整控除は適用されない。ただ、基礎控除を使っていないので、年間103万円(給与所得控除55万円+基礎控除48万円)までの給与所得の所得税が非課税となる。

 

ただし、非課税で重要になるのは所得税ではなく、住民税のほうだ。住民税の場合は基礎控除が43万円と、所得税の基礎控除よりも5万円少ない。そのため、国民年金受給者は、単純計算だと、年間98万円(給与所得控除55万円+基礎控除43万円)までの給与収入の住民税が非課税となるのだが、実は住民税の課税最低限は、自治体ごとに微妙に異なっている。例えば、東京23区の場合は、給与収入の課税最低限は年収100万円までだ。国民年金受給者の場合、月額8万3333円というのが、無税で収入を増やせるギリギリのラインなのだ。一方、平均的な厚生年金受給者の場合は、無税で給与収入を増やせるのは、年間65万円まで。つまり、月額5万4166円までということになる。

 

逆に言うと、厚生年金受給者が、老後もずっと月額5万4000円の給与をもらい続けるというのは、税制面を考えると賢い働き方だということになる。収入がすべて給与所得控除と調整控除で控除されるので、所得が発生しない。所得ゼロだから税金を支払う必要もないし、年金保険料の支払いも必要がないからだ。夫婦それぞれが5万4000円の給料をもらえば、年金月額が13万円の時代になっても、月収は23万8000円と、かなりよい生活をすることができる。

 

 

また、月収が5万4000円でよければ、好きな仕事を選ぶこともできるだろう。そんなに都合よく月給5万4000円の仕事は見つからないと思われるかもしれないが、パートタイムやアルバイトとして、月5万4000円分だけ働けばよいだけの話だ。

 

さらに自分の会社を設立して、売上はすべて会社に入れてもらい、その会社から毎月5万4000円の給料をもらうという手もある。もちろん会社を運営するためには、何らかの売上を得ることが必要だが、そこは自分の得意なこと、あるいは好きなことを収入にすればよい。例えば、手先の器用な人は便利屋をやってもよいし、ウエブデザインを請け負ったり、イベントのカメラマンをしたりと、いくらでも方法はある。私が運営する「客のこない」博物館でさえ、少額だが、売上はあるのだ。

 

 

森永 卓郎

獨協大学経済学部 教授

 

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※本連載は森永卓郎氏の著書『長生き地獄 資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋』(KADOKAWA)から一部を抜粋し、再編集したものです。

長生き地獄 資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋

長生き地獄 資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋

森永 卓郎

KADOKAWA

夫婦2人の公的年金「月額13万円」時代がやってくる――長生き地獄を避けるには? 高齢者の生活を支えてきた公的年金が、今後ずるずると減り続けていく。今から30年後には平均的サラリーマン世帯だった夫婦2人の年金が、月額…

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