日本人が貧しくなった原因は「成長率の低さ」にある
筆者は、日本人と外国人を比較して日本人が相対的に貧しくなった、という結論自体を否定するつもりはありません。30年前と比べれば、アジア諸国の人々の生活水準は劇的に向上しているのに、我々の生活水準はあまり向上していないからです。
もっとも、それは円安だからではなく、日本経済の経済成長率がアジア諸国の経済成長率よりも低いからです。経済が成長すれば、国民の生活水準が向上し、経済が成長しなければ国民の生活水準が向上しない、というのは当然のことです。
では、なぜアジア諸国の経済は成長しているのに、日本の経済は成長していないのでしょうか。本来はそれを論じるべきなのでしょうが、本稿の守備範囲を外れますので、「日本も高度成長期には欧米から同じように見られていたはずだ」と記すにとどめておきましょう。
世の中には悲観論が多いので要注意!?
世の中には悲観的なことをいいたがる人が大勢います。経済評論家は「大丈夫です」というより、「問題です、心配です」というほうが賢そうに見えますし、客も興味深く聞いてくれるので、悲観的な話をしたがります。
マスコミも、悲観的な話のほうが、視聴率が上がったり販売数が増えたりしますから、悲観的な話を好みます。筆者も時々マスコミの取材を受けますが、「大丈夫です」と言うと「なにかひとつでも心配な点はありませんか」などと聞かれたりしますから(笑)。
本稿の関連でいえば、「円安で日本人が貧しくなった」といいたい人が多いのでしょうね。「円安で日本人の海外資産が増えた」「円安で輸出企業が儲かっている」という話をする人が少ないのと対照的です。
そんなときには、一昔前まで「円高で輸出企業が苦しくて大変だ」といわれていたことを思い出しましょう。当時は「円高で海外のモノが安く買える」などという人はおらず、「円高なのに国内の物価が下がらないから内外価格差が拡大して問題だ」という声のほうが圧倒的に大きかったわけです。
筆者は天邪鬼なので、「円安で困った」という話を聞くたびに、円高で困ったといっていた人のことを思い出します。彼らが困ったといっていたことの反対を考えると、円安も悪くないと思えてくるのです(笑)。
今回は以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、このシリーズはわかりやすさを最優先として書いていますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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