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為替レート、実質的に50年ぶりの円安
為替レートは、50年前は1ドルが300円程度だったのが最近では120円程度で推移していますから、大幅な円高だと思っている人も多いでしょうが、実質的には50年ぶりの円安だ、というニュースが話題になっています。
過去50年間、外国では大幅に物価が上昇したのに対し、日本はあまり上昇していないので、物価上昇率の差を考慮して輸出の難しさを計算すると、50年前と同じだということなのです。
計算結果は「実質実効為替レート」と呼ばれていますが、「輸出困難度指数」と言い換えた方が理解しやすくていいでしょう。詳しくは前回の拙稿(『50年前に逆戻り!? 貧しくなった日本「原因は円安」との見方は正しいか【経済評論家が解説】』)をご参照下さい。
過去50年間の平均と比べてはるかに円安の水準だ、ということもありますし、20年前にはいまよりはるかに輸出がむずかしかったのに貿易収支が黒字だったわけで、そのときと比べれば、いまの為替レートは輸出企業にとても優しい(一方で輸入物価が上がって生活は苦しい)ということもいえるわけです。
別の見方をするなら、50年前は「日本製品は安いけれども品質が悪い」と言われていた頃ですから、その時代と実質的に同じ為替レートなのであれば、輸出が簡単だというのは容易にイメージできるでしょう。
「そのうち是正されるはず」と安易に考えては危険かも
円安であれば、輸出企業は「輸出すれば儲かる」と考えて輸出を頑張るはずです。それによって輸出が増えれば、輸出企業が海外から持ち帰ったドルを銀行で売るので、ドル安円高になるはずです。
あるいは「輸入ワインは高いから国産の焼酎を飲もう」という人が増えれば、ワインの輸入が減り、輸入のためのドル買いが減るのでドル安円高になるはずです。
したがって、実質実効為替レートが50年ぶりの低さだということは、今後輸出が増えて輸入が減って円高になるはずだ、と考える人も多いでしょう。筆者も、アベノミクスで大幅な円安になったときにはそう考えていましたが、それは誤りだったようです。
それは、実質的な円安なのに、増えるはずの輸出が増えず、減るはずの輸入が減らなかった、ということなのです。過去数年間に起きていないことは、今後も起きそうもありませんから、今後も円高にはならないかもしれません。
為替レートを動かす要因は多様ですから、今後のことを予想するのは困難ですが、少なくとも「いまの為替レートは円安すぎるから、いつかは是正されるだろう」という考え方は危険だ、ということですね。
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