(※写真はイメージです/PIXTA)

東京・名古屋間をつなぐ「リニア中央新幹線」計画や、都心から約15km圏域を結ぶ「東京外かく環状道路」計画などの建設工事は、地下の深層部で進められています。これまでも公共事業が公道の地下で行われることは当然とされてきましたが、近年施行された「大深度法」では、私たちの生活環境にも少なからぬ影響が及びます。法律の概要のほか、工事現場上の不動産の価値評価等について見ていきます。

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    都会の地下、ライフラインや地下鉄で「飽和状態」に

     

    「大深度地下(だいしんどちか)」とは、「地表から40mより深く、一般的に利用されない地下」と定義されています。

     

    そしてこの大深度地下に該当する土地の公共利用について定められたルールが「大深度法(正式名称:大深度地下の公共的使用に関する特別措置法)」で、2001年から施行されました。

     

    大深度法が施行される前までは、地下インフラ整備が必要な場合、公道の下の土地が活用されてきました。よく知られているのは、上・下水道管、ガス管などのライフラインや、都市の大動脈である地下鉄道網の整備などです。

     

    東京都内では1927年開業の銀座線から2008年開業の副都心線までで合計13路線(都営4路線+東京メトロ9路線)が稼働しています。日本における地下鉄第一号である銀座線は最大深度16mと比較的浅い位置を走っていますが、その後新路線が開通するごとに地下深度は増し、2000年に全線開業した大江戸線に至っては、最大深度49mまで潜り込んでいます。

     

    大江戸線は外苑東通りや山手通り、春日通り、清住通りなどの地下を経由して繋がれていますが、その行く手には銀座線、日比谷線、半蔵門線、東西線、丸の内線などの既存路線が次々と立ち塞がるため、それらをジェットコースターのように掻い潜りながら掘削工事が進められました。

     

    大江戸線のあとには明治通りの地下を走る副都心線も開通しましたが、もはやこれが限界、都会の地下は飽和状態に達しています。

    公道利用の限界を迎えた結果…「大深度法」が誕生

     

    公道利用が限界となれば、あとは民間宅地の地下に頼るしかありません。そうなると、複数の土地所有者に対して莫大な額の地上権設定料を支払うことになります。

     

    その出費を回避するために公道地下を利用してきたわけですが、今後どのように地下インフラ整備を進めていけばよいか、政府内で話し合いが重ねられました。その結果、編み出された打開策が「大深度法」です。

     

    同法は、「一般的に利用されない地下」を、「公共利用であれば土地所有者に許可を得なくても有効活用できる」と定めたものです。要するに、道路・河川・鉄道・電気通信・電気・ガス・上下水道等の公共の利益となる事業であれば、土地所有者の許可なく地下利用ができ、かつ土地所有者に補償をしなくても利用することが認められるという、政府にとって都合のいい内容になっています。

     

    深さの定義については以下のように説明されています。

     

    ●地下室の建設のための利用が通常おこなわれない深さ(地下40m以深)

     

    ●建築物の基礎の設置のための利用が通常おこなわれない深さ(支持地盤上面から10m以深)

     

    上記の通り、地下40mより深い、またはマンションやビルなどの地上に建つ建造物の基礎を支える地盤より10m深い空間が、大深度地下に該当するということです。このルールの対象となる地域は、三大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏)の人口集中度等を勘案して政令で定められます。

     

     

    次ページ地下深くの公共事業で、市民生活を脅かす事故が…

    ※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。

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