海外経済の変化による国内景気変動に注意
景気を回復させる力としては、財政金融政策が圧倒的に重要で、たまたまその時期に海外景気も回復していれば輸出数量の増加が財政金融政策の効果を後押しする、といった程度でしょう。
一方で、景気を悪化させる力としては海外の景気後退による輸出数量の減少が極めて重要です。インフレ懸念で政策的に景気を悪化させる事は日本では滅多にありませんが、内需が弱いために輸出が少し減っただけでも容易に景気が腰折れしてしまうからです。
海外景気については、海外経済の予想屋に聞けばいいので悩む必要はないのですが、海外の景気変動が日本の輸出数量にどの程度影響するのか、輸出数量の変化が国内景気にどの程度影響するのか、等々は長年の経験と勘で予想するわけです。
こちらは頻繁に経験していることなので、景気予想屋たちにとっては手慣れたものだと思いますが。
景気が順調に拡大中だと、予想屋は比較的ヒマである
景気が順調に拡大しているときは、景気予想屋は比較的ヒマです。インフレ懸念が出てくるほど過熱すればともかく、そうでなければ財政金融政策は登場しないはずだからです。
したがって、主な仕事は海外経済の予想屋に海外で大きな景気の変動が起きそうか否かを定期的に問い合わせればいいだけです。
2000年代も2010年代も、比較的順調な景気拡大が長期間続いたので、景気予想屋は結構ヒマだったと思います。もちろん、その間にいろいろ勉強して次の景気後退に備えたりする必要はあったのでしょうが。
もっとも予測困難なのは「景気回復初期」である
一方で、景気回復初期の景気は予測が非常に困難で、景気予想屋が最も苦労する時期だといえるでしょう。景気回復初期に景気が後退するとすれば、海外経済の変調で輸出数量が減る場合が主ですが、輸出数量減が景気を後退させるだけ大きいのか否かを予想するのが大変なのです。
景気は自分では方向を変えないわけですが、その予想は、嵐で倒れかけた船が倒れてしまうのか、持ち直してなにごともなかったように航行を続けるのか、という予想に近いものがあります。
波があと1センチ高まったら船が沈没するが、現状の波なら大丈夫だ、というときには、船乗りは非常に緊張すると思いますが、景気予想屋も大変緊張します。わずかの差で結果が大きく異なるからです。
問題なのは、日本の景気は弱々しいので、海外からの小さなショックで景気が腰折れしそうな時期も長い、ということです。病み上がりの人が少し寒風に吹かれただけで風邪をひいてしまう、といったイメージでしょうか。
今回は以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、このシリーズはわかりやすさを最優先として書いていますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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