冷暖房を行う家では…「気密性」「耐久性」の深い関係
中途半端な断熱・気密性能の家では、壁の中で結露が起きてしまうためです。
住宅に生じる結露は、大きく2つに分けられます。よく目にする冬の窓ガラスや窓枠等で生じるものは「表面結露」です。それとは別に、壁の中の目に見えないところでも結露が起きている可能性があります。これを「壁内結露(内部結露)」といいます。
「壁内結露」は主に冬、暖房・加湿されて水蒸気をたっぷりと含んだ室内の空気が、壁の中に侵入し、外気で冷やされることで発生します([図表2]参照)。
無暖房のすきま風だらけの家ならば、壁内結露は起こりません。そして、十分な断熱・気密性能を確保し、さらに壁内の水蒸気を逃がすための通気層をキチンと設けた住宅でも、壁内結露は生じません。壁の中で結露が起こらないよう、壁内の水蒸気量をコントロールできているためです。
水蒸気を壁の中に全く入れないようにしましょうということではありません。壁の中で結露が起こらないようにコントロールすることが重要なのです。結露計算を行うことで、結露リスクを把握することが可能になります。
壁内結露が生じるのは、断熱・気密性能の中途半端な性能の家なのです。
また近年、夏に起こる壁内結露も問題になっています。これは夏型結露と呼ばれます。
夏季に気温が35度以上になる猛暑日が増え、高温多湿の外気が壁の中に侵入して、室内側が冷房で冷やされているために、壁内の室内側で結露が起きてしまうのです。特にコロナ禍により在宅時間が長くなり、夏の冷房使用時間が伸びたことで、夏型の壁内結露の発生はより深刻になっています。
壁内結露が起こると、壁の中にカビ・ダニが発生します。また、湿潤環境を好むシロアリや腐朽菌という木材を腐らせる菌の増殖リスクが高まります。この腐朽菌は、キノコの仲間で、木材の主成分であるセルロース、ヘミセルロース、リグニンを分解してしまいます。
つまり壁内結露は、カビ・ダニを発生させて居住者の健康に悪影響を及ぼすだけでなく、木材を劣化させ、耐震性能までも低下させるのです。耐震性能を重視して耐震等級3にこだわる方が増えていますが、耐震性能にこだわるならば、壁内結露が起こらない壁構成にもこだわる必要があります。