※写真はイメージです/PIXTA

これからの時代、企業が永続的に発展していくためには「資産形成」が重要です。企業の資産形成方法として、株式投資であれば「個別銘柄への一括投資」が一般的でしょう。しかし税理士の三反田純一郎氏は「企業で行う株式の一括投資はお勧めしない」と明言します。中小企業が安全かつ着実に資産を殖やしていくには、どうすれば良いのでしょうか?

■「長期積立て投資」は特に“中小企業向き”

ドルコスト平均法による積立投資でやることは、毎月同じ額で毎月決まった商品を買い付け積み立てること(分散投資する)だけです。積立期間を長くとればとるほど一括投資に比べて平均取得価格が下がるため、長期的なリスクを限りなく抑えつつ、複利の効果も最大限に取り込むことを実現できる資産形成手法です。

 

私はいつも、この積立投資をまず少額でもよいので始めてみてくださいとアドバイスしています。なぜなら積立投資はやってみると良さのわかる投資手法だからです。

 

実際私がアドバイスしているクライアントの積立投資の運用リターンを見てみると、下は数%の方から上は数十%の方までと幅はありますが、投資期間が3年を超えている方で保有時価が投資金額を下回る状態、つまり含み損がある方は一人もいません。

 

実は、図表4の金融機関の成績ランキングで投資信託の利益が出ているとされた上位3社も、実は原則として顧客に積立投資での投資を前提として実践させている会社だったからこのような高いパフォーマンスを実現できていたのです。

 

出所:金融庁 金融機関から投資信託を購入した顧客の何割が利益を得ているかを明らかにするために、投資成果を分析したもの 詳しい解説は【⇒関連記事:金利ゼロなのに「資産の大半を銀行預金に放置する」日本人の謎】
[図表4]金融機関の成績ランキング(2018年) 出所:金融庁
金融機関から投資信託を購入した顧客の何割が利益を得ているかを明らかにするために、投資成果を分析したもの
詳しい解説は【⇒関連記事:金利ゼロなのに「資産の大半を銀行預金に放置する」日本人の謎】

 

図表5は年度別の各資産の種類別のリターン上位ランキングとなります。これをみると、人間がどの資産に投資するかを的確に予想することがいかに無意味なことであるかがわかります。そんなことをせず、これら資産に分散したポートフォリオを組んで、積立投資をしておけば、相場や銘柄に一喜一憂する必要や手間もなくなります。その手間をなくす手法が投資信託のドルコスト平均法による積立投資なのです。

 

出所:Morning Starのデータをもとに筆者作成。三反田純一郎著『会社の資産形成 成功の法則』(中央経済社)より
[図表5]各資産の年間リターン 出所:Morning Starのデータをもとに筆者作成。三反田純一郎著『会社の資産形成 成功の法則』(中央経済社)より

 

企業か個人かにかかわらず、株式一括投資で大きなリターンを狙うことは大きなリスクが伴います。お金を働かせるためにリスクをとることは重要ですが、できるだけリスクを減らす仕組みで、特に安全に運用することが求められる中小企業の資産形成では、長期的なリスクを大きく低減できるドルコスト平均法での積立投資が、安全に、かつ確実に殖やしていく優れた資産形成手段といえます。

 

しかし、ドルコスト平均法による長期積立て投資は、諸外国では一般的とされていますが、日本ではまだまだされている方が少数派です。

 

なぜ日本で積立投資が定着しないのでしょうか?

 

一番の理由は、金融機関にとっては営業マンに入る手数料が同じ販売金額の何%なのであれば、月々数万円という少額の積立投資を集めるよりもまとまった数千万の一括投資で買ってもらうほうがノルマ達成に近づくことにあると私は思います。これが一括投資を勧めるインセンティブが働く一方で、積立投資を勧める営業マンがほとんどいなかった理由でしょう。

 

経営者自身が一括投資のリスクと長期積み立て投資のリスクを比較して、積立投資を行っていれば、このようなことは避けられます。

次ページ銘柄や相場にこだわらず、まずは始めることが大切

※本連載は、三反田純一郎氏の著書『会社の資産形成 成功の法則』(中央経済社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

会社の資産形成 成功の法則―「見えない」資産を築く最強の戦略

会社の資産形成 成功の法則―「見えない」資産を築く最強の戦略

三反田 純一郎

中央経済社

どのような資産を、どのような理由で、どれくらい所有するか? 資産形成の優劣が会社の生死を決める。 保険は投資対象から外す、少額でも投資信託の積立投資は行う、銀行の経営者保証の解除は何としても勝ち取る etc。会…

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