■「長期積立て投資」は特に“中小企業向き”
ドルコスト平均法による積立投資でやることは、毎月同じ額で毎月決まった商品を買い付け積み立てること(分散投資する)だけです。積立期間を長くとればとるほど一括投資に比べて平均取得価格が下がるため、長期的なリスクを限りなく抑えつつ、複利の効果も最大限に取り込むことを実現できる資産形成手法です。
私はいつも、この積立投資をまず少額でもよいので始めてみてくださいとアドバイスしています。なぜなら積立投資はやってみると良さのわかる投資手法だからです。
実際私がアドバイスしているクライアントの積立投資の運用リターンを見てみると、下は数%の方から上は数十%の方までと幅はありますが、投資期間が3年を超えている方で保有時価が投資金額を下回る状態、つまり含み損がある方は一人もいません。
実は、図表4の金融機関の成績ランキングで投資信託の利益が出ているとされた上位3社も、実は原則として顧客に積立投資での投資を前提として実践させている会社だったからこのような高いパフォーマンスを実現できていたのです。
図表5は年度別の各資産の種類別のリターン上位ランキングとなります。これをみると、人間がどの資産に投資するかを的確に予想することがいかに無意味なことであるかがわかります。そんなことをせず、これら資産に分散したポートフォリオを組んで、積立投資をしておけば、相場や銘柄に一喜一憂する必要や手間もなくなります。その手間をなくす手法が投資信託のドルコスト平均法による積立投資なのです。
企業か個人かにかかわらず、株式一括投資で大きなリターンを狙うことは大きなリスクが伴います。お金を働かせるためにリスクをとることは重要ですが、できるだけリスクを減らす仕組みで、特に安全に運用することが求められる中小企業の資産形成では、長期的なリスクを大きく低減できるドルコスト平均法での積立投資が、安全に、かつ確実に殖やしていく優れた資産形成手段といえます。
しかし、ドルコスト平均法による長期積立て投資は、諸外国では一般的とされていますが、日本ではまだまだされている方が少数派です。
なぜ日本で積立投資が定着しないのでしょうか?
一番の理由は、金融機関にとっては営業マンに入る手数料が同じ販売金額の何%なのであれば、月々数万円という少額の積立投資を集めるよりもまとまった数千万の一括投資で買ってもらうほうがノルマ達成に近づくことにあると私は思います。これが一括投資を勧めるインセンティブが働く一方で、積立投資を勧める営業マンがほとんどいなかった理由でしょう。
経営者自身が一括投資のリスクと長期積み立て投資のリスクを比較して、積立投資を行っていれば、このようなことは避けられます。