(※写真はイメージです/PIXTA)

日本の景気を上向かせるため、政府日銀は金融緩和政策を軸に、あらゆるアプローチを行っています。しかし、想定していた効果は得られず、なんとも手ごたえのない状況に…。なぜでしょうか。経済評論家の塚崎公義氏が平易に解説します。

上昇した株価が景気回復させる力は「限定的」

金融緩和で金利が下がれば、株価を押し上げる力として働くでしょう。ゼロ金利下の量的緩和が株価を押し上げる力は、理屈上は大きくないはずですが、黒田緩和では株価が上がりました。

 

株価は美人投票の世界なので、投資家たちが「金融緩和は株高要因だ」と考えて買い注文を出せば、株価が上がる、というわけです。投資家たちの確信はかなり強固なようですから、金融緩和は株高要因だと考えていいのでしょうね。

 

もっとも、株価が上がっても、それが景気を回復させる力は限定的でしょう。金持ちは「株価が上がって儲かったから贅沢をしよう」などと考えないでしょうから。

 

日本の庶民は、そもそもあまり株を持っていませんし、株価が上がって儲かったとしても、老後不安から儲けをそのまま老後資金として貯金してしまう人が多いでしょう。

ゼロ金利下の量的緩和では、日米金利差は拡大せず…

金融が緩和されると、日本より米国の方が金利が高いから、日本国債を買わずに米国債を買おうという投資家が増え、彼らがドルを買うのでドル高円安になる、というストーリーは、理屈上は存在します。

 

しかし、ゼロ金利下での量的緩和では日米金利差は拡大しないので、効果はないはずです。あるとすれば、美人投票的なドル買いですね。

 

もっとも、美人投票的なドル買いは、米国の金融引き締めと比較して日本の金融緩和の効果は限定的なようです。日本の通貨の価値を決める美人投票が米国の金融政策に反応するというのは不思議な気もしますが、美人投票は理屈ではありませんから(笑)。

 

ちなみに、アベノミクスによる円安は大幅でしたが、その後の追加的な緩和の効果がほとんど見られないところを見ると、行き過ぎた円高が修正された、という面が強かったのかもしれませんね。

「円安による景気拡大」も、見込めなくなってきた

円安になると輸出が増加して景気を回復させる、というのが理屈なのですが、最近は円安になっても輸出が増えにくくなっているようです。アベノミクスによる大幅な円安でも、輸出数量はそれほど増えませんでした。増えた分は海外経済の成長だけで説明できてしまうほどだったのです。

 

主因は、日本企業の行動の変化だと思われます。為替レートに影響されない経営体質を目指して「地産地消」に注力している企業が増えているようなのです。輸出ではなく、売れる所で現地生産をする、というわけですね。

 

日本は人口減少で経済規模が縮小していくと考えて、人口が増えている海外に展開しておこう、といった思惑も影響しているのだと思います。

 

そうなると、日本が金融緩和をしても、そもそも円安ドル高がそれほど進まず、進んだとしても輸出はそれほど増えず、景気への影響は限定的だ、ということになるわけですね。

 

今回は以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、このシリーズはわかりやすさを最優先として書いていますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義

経済評論家

 

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