「相続したいけど土地はいらない」…その理由とは
義務化によって相続登記をしなければいけなくなった一方で、「相続財産に土地があるけれど、いらない」「土地だけ相続せずに手放したい」という人は少なくありません。実際に司法書士として働いていると、「お金などの金融資産は相続したいけれど、土地は相続したくない」という相談はやはり多いです。
山林や畑などは管理が非常に大変です。二束三文の土地を相続してしまい、売るに売れないのに管理費はかかる。だとしたら土地はいらない……と考える方は少なくありません。
しかし、従来の相続制度では金融資産を相続して、土地のみの相続を放棄する、ということはできませんでした。土地の相続を放棄したいのであれば、金融資産を含めたすべての相続を放棄する必要があったのです。このような理由で、相続人同士での土地を押し付け合いが起き、相続がまとまらないケースは多くあります。
そんななかで、相続登記義務化によって、相続したくない土地でも、きちんと相続の申請する必要がでてきてしまいました。
相続土地の所有権を手放せる「相続土地国庫帰属制度」
こうして相続したくない土地を相続してしまった人のために、相続した土地の所有権を手放せる制度、「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。
条件が細かく定められていますが、主に次の6つの条件を満たすことが必要です。
■「相続土地国庫帰属制度」適用のための6つの条件
1.土地の上に建物がない
2.境界が明確である
3.土壌汚染などがない
4.通路などではない
5.担保権や使用権、抵当権がない
6.管理が難しくない
これらの条件を充足し、法務大臣の承認が得られれば、所有権を手放すことができるのです。
しかし、この「相続土地国庫帰属制度」を利用するには、10年分の管理費を国に予納する必要があります。
土地の管理費がいくらになるのかはその土地によって違いますが、例を挙げると、「あなたが帰属を希望している土地には、1年あたり10万円の管理費がかかるので、10年分で100万円を予納してください」といわれると、金銭的に厳しい方もでてきてしまいます。
そのような場合は、相続土地国庫帰属制度の利用ができないため、冒頭で解説した相続登記義務化に戻ります。相続登記を申請し、土地を所有しなければならなくなるのです。
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