「人生鳥瞰図」を完成させてやるべきこと
「人生テーマの発掘」と「ライフデザインの構築」。二つのパートを作成したら、最終的に人生鳥瞰図として一つにまとめます。実際に研修に参加された方が描いた「人生鳥瞰図」(図3)を例として紹介します。参考にしてみてください。
できあがった人生鳥瞰図を眺めてください。過去、現在、そして未来という人生の全体像を一望できるはずです。
「価値観」「自分像」「私に合った仕事」「キャリア目標」「天職への道」が、それぞれ関連性を持って、ひとつながりになっていることがわかるはずです。
人生鳥瞰図は、一度完成させ、俯瞰したら終わりというものではありません。
壮年期、さらには、その先の実年期に向けて、人生戦略を立て、ライフデザインを描くには、常に意識は未来に向けていなければなりません。
そして、もし、キャリア・ビジョンの方向性を変えてみようと思ったとき、あるいは、新しいキャリア目標に挑戦しようと思ったとき、もう一度、「自分像」(WHO)をはじめとする5W2Hの適職探しに戻ったり、より大元の自分の「価値観」に立ち返って、そこからまた、人生鳥瞰図を作成してみてもいいのです。
行きつ戻りつを繰り返しながら、自分を振り返り、将来を展望する。そして、自らの可能性を信じて、「天職への道」を模索してください。
よく、「自分探し」という言葉が使われます。しかし、自分は探すものなのでしょうか。探せば、「本当の自分」が見つかるのでしょうか。私は、自分はつくるものであり、いくら探しても見つかるものではないと、考えます。
メーテルリンクの『青い鳥』の童話も、探し回ったあげく、結局は自分の飼っている鳥が青い鳥だったことに気づくという物語でした。
「現在の私」は「過去の私」の延長線上にあると考えがちです。確かに、「生い立ち」「出会い」「出来事」により形づくられた「価値観」や「自分像」が土台になり、キャリアという舞台で仕事歴、学習歴、経験暦が積み上がって「現在の私」があるのは事実です。
ただ、単に過去の延長線上にあるのではなく、その都度、未来に目を向け、何らかの可能性が見えたとき、過去から現在に至る自分を問い直し、「自分はどうあるべきか」「何をすべきか」を考えて、一歩一歩踏み出し、一段一段階段を昇って「現在の私」がある。そうやって、自分というものがつくられてきたのです。
未来のこうありたい自分が見えてきたとき、同時に過去から現在に至る自分が浮かび上がり、一歩踏み出し、一段昇る意欲が生まれる。
織田信長を題材とした『下天は夢か』がベストセラーとなり、豊臣秀吉、徳川家康、武田信玄、上杉謙信など戦国大名について多くの歴史小説を著した作家の津本陽氏の次のような言葉があります。
「年齢を数える前に、わが意欲を思え」
大切なのは、自らの人生を開拓しようとする意欲です。一歩踏み出し、一段昇る意欲は年齢に関係ありません。
人生鳥瞰図はまさに「こうありたい自分づくり」のための図解です。
久恒 啓一
多摩大学名誉教授・宮城大学名誉教授