●世界的に株価の不安定な動きが続くなか、米ハイテク株が調整色を強めGAFAM株も大幅下落。
●米金融引き締めへの警戒から一極集中投資が進んだGAFAM株が崩れ米国株全体に波及した。
●GAFAM株の調整は、投資の偏りを是正する健全な動きであり、成長性を否定するものではない。
世界的に株価の不安定な動きが続くなか、米ハイテク株が調整色を強めGAFAM株も大幅下落
このところ、世界の株式市場は不安定な動きが続いており、特に米ハイテク株の下げが目立っています。米ハイテク企業の代表格であるGAFAM(グーグルの持ち株会社アルファベット、アップル、メタの旧社名フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)の株価動向をみると、直近高値から大幅に下落しており、メタとアマゾン・ドット・コムの下落率は20%を超えています(図表1)。
GAFAMはここ数年、米国株のけん引役となってきましたが、これはGAFAMの高い人気によるところが大きかったと思われます。しかしながら、投資マネーがGAFAMに極端に集中した結果、この5社の時価総額合計は、2021年12月末時点で、S&P500種株価指数の時価総額の約24%を占め(図表2)、東証1部上場企業(2021年12月末時点で2,182社)の時価総額合計の約1.5倍に達しています。
米金融引き締めへの警戒から一極集中投資が進んだGAFAM株が崩れ米国株全体に波及した
このような状況下では、GAFAM株が調整局面を迎えた場合、米国株が全体として調整色を強めてしまう恐れがあることは、2021年7月30日付レポート『米ハイテク大手の株価調整のリスクシナリオとは?』で指摘した通りです。同レポートでは、GAFAM株の調整入りにつながるリスクシナリオをいくつか想定し、株価への影響を検証しました。この時、リスクシナリオの1つとして挙げたのが「米金融環境が極端に引き締まるケース」です。
具体的には、米景気回復の度合いが予想外に強くなり、かつ、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐケースです。急速な引き締めにはFRBによる保有国債の売却が有効ですが、当時はFRBがそこまで踏み込むことはないとみていました。その後、物価の高止まりを受けてFRBがタカ派に転じ、市場で国債売却の思惑が浮上すると、GAFAM株は金融環境が引き締まる前に、一気に調整色を強めました。
GAFAM株の調整は、投資の偏りを是正する健全な動きであり、成長性を否定するものではない
前述の通り、GAFAM5社の時価総額は、偏った投資状況を示唆しています。そのため、足元の株価調整は、むしろ健全な動きであり、GAFAMの成長性を否定するものではありません。むしろ、このまま偏った状況が続き、偏りの度合いが増す方が、後々の調整は深刻になる恐れがあります。なお、GAFAMの予想株価収益率(PER)は、4社が20倍台に落ち着いてきており(図表1)、今後の決算次第では、買い戻しの動きも予想されます。
また、2021年7月6日付レポート『米国株の注意点と事前に備えておきたいことについて』では、GAFAM株の調整リスクに対する備えを解説しました。ポイントは、リスクを取りすぎていないか、投資先が偏っていないかを事前に確認することであり、適切なポートフォリオの構築も大切と説明しました。これらの備えによって、相場環境の急変時にも、落ち着いた行動ができると考えています。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米ハイテク株の調整について』を参照)。
(2022年1月26日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト