●米国株は堅調に推移しているが、100%を上回ると割高とされるバフェット指数はすでに200%超。
●GAFAMの時価総額は現在東証1部の約1.3倍、投資マネーが一部の米IT企業に極端に集中。
●直ちに調整するとは限らないが、事前の備えとして投資の現状確認やポートフォリオの構築は大切。
米国株は堅調に推移しているが、100%を上回ると割高とされるバフェット指数はすでに200%超
7月2日の米国株式市場では、ダウ工業株30種平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合株価指数の主要3指数が、そろって過去最高値を更新しました。このうち、S&P500種株価指数は7営業日連続で最高値を更新しており、これは1997年以来のこととなります。このように、米国株は堅調に推移していますが、少し注意しておきたい点もあるため、以下、解説します。
まず、米国株のバフェット指数を確認します。バフェット指数とは、株式の時価総額を名目GDPで割り、100を掛けてパーセント表示にした数字で、一般に100%を上回れば株価は割高、下回れば割安と解釈されます。著名投資家のウォーレン・バフェット氏がこれを重視するとされていることから、広くバフェット指数と呼ばれています。米国株のバフェット指数は、すでに200%を超えています(図表1)。
GAFAMの時価総額は現在東証1部の約1.3倍、投資マネーが一部の米IT企業に極端に集中
次に、個別銘柄をみると、米国では近年、GAFAM(グーグルの持ち株会社アルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)の株価が顕著に上昇しており、株式市場全体の牽引役となっています。これら巨大IT(情報技術)企業5社は、コロナで変容した生活様式に対応し、自動運転など次世代技術でも成長余地が大きいとの声も聞かれます。
その結果、GAFAMの時価総額はこのところ急増しています。GAFAM5社の時価総額合計と、東証1部上場企業(7月2日時点で2,187社)の時価総額合計の推移を示したものが図表2です。これをみると、GAFAM5社の時価総額合計は、昨年に東証1部全体の時価総額を上回り、直近で1.3倍程度となっています。ここから、投資マネーが一部の米IT企業に極端に集中している様子がうかがえます。
直ちに調整するとは限らないが、事前の備えとして投資の現状確認やポートフォリオの構築は大切
さて、ここまで、少し注意しておきたい点をみてきましたが、米国株のバフェット指数については、100%を超える状態がすでに長く続いており、足元で200%を超えていても、直ちに大きな調整が入るとは限りません。また、同様に、GAFAMへの資金一極集中も、直ちに巻き戻しが発生するとは限りません。ただ、何らかのきっかけで、調整や巻き戻しが生じやすい状態にあることは、理解しておくべきだと考えます。
そのような事態の発生に備え、事前にすべきことは、個人投資家であれば、まずはリスクを取りすぎていないか、投資先が偏っていないかを確認しておくことです。また、2019年11月26日付レポート『投機筋に振り回されず「ポートフォリオ」を構築するには?』や、2020年2月18日『新型コロナに揺れる市場…投資家は、今どのように行動する?』で説明しましたが、適切なポートフォリオの構築も大切で、相場環境の急変時に、落ち着いた行動が可能になります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国株の注意点と事前に備えておきたいことについて』を参照)。
(2021年7月6日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト