この数年、ローン金利や建売住宅の価格の低下で、マイホームを手に入れたい人にとっては「良い時代」となっていますが、「安かろう、悪かろう」で完成したマイホームの悲痛な報告も後を絶ちません。本連載では、そんな欠陥・不具合の建売住宅を「つかまされない」秘訣を22のポイントに分けて解説します。連載第1回目は「外壁の継ぎ目のひび」を取り上げます。

素人でも見抜けるチェックポイントが存在

欠陥や不具合の大部分は施工者のケアレスミスが原因です。それがたとえ細かなミスだったとしても、甘く見てはいけません。長い年月をかけて建物をむしばみ、日常生活に支障をきたすような問題に発展する可能性もあるからです。

 

皆さんに知っておいていただきたいのは、たとえ、建築の素人であっても、見るべきポイントを押さえて丁寧にチェックしていくと、施工がきちんと行われているかどうかを見抜くことができるということです。

 

きちんとした仕事によって建てられた家は、特別な装飾などはなくても、あるべきものがあるべき場所に設置され、必要十分な造りになっているはずです。この〝必要十分〟を満たしているかを確認できなければなりません。

 

本格的な調査には専門的な機器が必要ですが、本章では、そういった機器による調査も含めて、簡単に実践できるチェックのポイントを、「外壁」「建物の見えない箇所」「室内」「水回り」に分けて紹介していきます。この知識をもとに内覧すれば、購入後に後悔する可能性はグッと低くなるはずです。

 

〈外壁〉
 ポイント①外壁の継ぎ目にひびはないか

 

家の見た目はとても大切です。もちろん、デザインがカッコいいとか、豪華な装飾が施されていることをいっているわけではありません。同じ建材を使って、同じ設計プランで建てられた家でも、施工業者が違うと、まったく同じに仕上がるとは言い切れません。

 

施工をする職人の熟練度、真面目さ(ときには、残念ながら不真面目さ)、現場の監督と職人との人間関係といった、買い手の側からはうかがい知ることができない部分が、家の見た目に現れてしまうのです。

釘を打つ場所が継ぎ目に近すぎると…

家の外観でまずチェックすべきなのは外壁です。建売住宅で一般的に使われている外壁は、サイディングボードです。その素材は大きく3種類に分けられ、セメント、セラミック、金属が主原料となっています。パワービルダーが使っているものは、耐水性や耐火性、耐久性での基準を満たして規格化されたサイディングボードです。

 

この場合、工場生産であるため品質が均一であることや、価格が安く抑えられているメリットがあります。特別なタイプを選ばない限りは、安全性には問題はないはずです。サイディングボードは、下地に釘(サイディング釘)で取り付けていきますが、釘を打つ場所は、合い決り(あいじゃくり)と呼ぶ継ぎ目の部分から20ミリメートル離して打つように決められています。

 

しかし、これが守られず、継ぎ目に近すぎる場所に打っている場合があります。継ぎ目から近すぎる場所に釘が打たれていると、周辺のサイディングボードに割れや欠けが発生してしまいます。

 

また、工事業者によっては、サイディング釘をきちんと最後まで打ち込んでいないこともあります。釘の頭が飛び出していると、何かのときに体に触れて、けがをすることがあり、とても危険です。こうした点もチェックしてください。

 

継ぎ目から20ミリメートル未満であっても、サイディングが割れていなければ通常は問題ありませんが、割れていた場合は売主側に何らかの補修を要請する必要があります。

    

     [図表] サイディング釘打ち

本連載は、2015年6月25日刊行の書籍『こんな建売住宅は買うな』から抜粋したものです。その後の法律・条例改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

こんな建売住宅は買うな

こんな建売住宅は買うな

田中 勲

幻冬舎メディアコンサルティング

注文住宅と比べて安く購入できる建売住宅は、特に地価の高い都心近郊で人気がありますが、実は流通している住宅の大部分が目に見えない欠陥・不具合を抱えているのが実情です。 実際に、断熱材のズレ・不足や、準防火地域にお…

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