(※写真はイメージです/PIXTA)

2021年、コロナに翻弄されたベトナム不動産ですが、2022年の動きはどうなるのでしょうか。現地のプロフェッショナルが、市場別に価格動向を読み解いていきます。南部ホーチミンを拠点とし、不動産ビジネスを展開する徳嶺勝信氏が解説します。

土地区画市場…需要回復、上昇は今年後半に集中か

ホーチミン市とその周辺地域の新規土地供給は、2021年に比べて増加する可能性があり、主にロンアン、ドンナイ、ビンズオン、バリヤブンタウなどの近隣省の市場に集中しています。

 

市場の需要は2021年に比べて回復していますが、上昇傾向は主に2022年後半に集中すると予想されています。これは政府の経済対策によるインフラ整備が加味されており、すでに実施しているロンタイン国際空港プロジェクト(ドンナイ省)に付随する港湾整備、高速道路建設、関連地域の道路整備、ホーチミン市とドンナイ省を結ぶ橋の建築等々、すでに許認可されている多くの公共事業に関連した地域での大規模プロジェクトによる土地区画の上昇が始まっています。

 

ホーチミン市での供給に関しては、多くの新規プロジェクトがまだ売りに出されていないため、土地区画市場は引き続き不足しています。プロジェクトは主にクチ郡、ビンチャイン郡、ホクモン郡、9区(現トゥドック市)などの郊外地域に小規模プロジェクトが集中している状況です。

賃貸市場…アパートは苦戦、オフィス物件は価格上昇

ホーチミン市でのマンション(アパート)の賃貸状況は、コロナ前と比較すると、賃貸価格は平均30%ほど下落しており、中心地近郊では最大50%以上下落している物件もあり、空室率も地域、物件等で異なるものの、コロナ禍で2年以上賃貸が決まっていない物件も多々あります。

 

とくに人気の物件でも20~30%下落しており、賃貸付に苦慮している状況です。下落の要因としてはコロナによる、外国企業の事業縮小や現地採用者及びベトナム人責任者への切り替え、外国人学校の先生など、多くの外国人が帰国の途に至ったことなどが考えられます。

 

感染状況が収まり、規制が緩和された現在でも、自国に帰国後、戻って来ない事例も増えており、賃料が出せる外国人の減少と比例して、自ずと賃料も下落傾向が続いています。

 

反面、オフィス物件はコロナ禍でも価格が上昇しており、大手不動産デベロッパーのCBRE VIETNAMの調査によると、2021年第4四半期時点では、グレードAの賃料は月額42.7$/m2と前四半期比で1.1%増加し、昨年の同時期とほぼ同じでした。

 

グレードBの賃料は月額25.5$/m2で、前四半期比で1.5%上昇し、前年比でわずかに0.6%上昇しています。昨年の第2四半期では大部分はオフィスの移転と再更新の取引ですが、直近は新規及び事務所の拡張などの賃貸取引を記録しています。

 

第4四半期にオフィスを拡張した企業は、金融/銀行、製造業などの既存産業が全体を占めており、総取引面積の47%です。IT及び小売/オンラインEコマース業界が成長し、総取引面積の30%となっています。

 

昨年は3つのグレードBのプロジェクトで新規供給があったのみで、グレードAの新規供給もここ数年記録されていません。供給不足もコロナ禍でも高価格で推移している要因のひとつです。

2022年の見通しは明るいが、本格的な動きは中旬以降

2022年のベトナムでの不動産市場は、肯定的な意見が大半を占めています。しかし、筆者は不動産市場で本格的な動きが出るのは今年の中旬以降だと見ています。

 

ただ、それまでに不安要素はいくつかあります。「政府の経済対策の進行遅れ」「世界的な金融市場の利上げの影響」「短期的な投機家の融資返済圧力(市場の6割が短期投機家)」等です。それにより、このまま市場が回復せずにバブル崩壊の可能性も加味したうえで、慎重に不動産市場を見て行く必要があります。

 

外国人の不動産購入に関しては、これまでも述べて来たように、物件ごとに厳しく精査することが必要です。個人的には、現在市場に売り出されている外国人購入可能物件ではインカムがよくても3%、キャピタルにおいては現時点では見通しが立たないと考えています。唯一の可能性としては、都市鉄道(ホーチミン、ハノイ)沿線で将来性のある割安物件を見つけることです。現時点においては、それ以外お勧め物件はない状況です。

 

 

徳嶺 勝信
VINACOMPASS Co., Ltd.
General Director

 

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