
隠し子を遺言で認知することは認められていますが、高確率で相続トラブルになると言えます。「遺言認知」について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・天野清一氏が解説していきます。
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愛人との隠し子…「妻に秘密にしつつ遺産は遺したい」
遺言で子供を認知することを、「遺言認知」といいます。
「子供を認知する」というのは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子供に対して、父親が自分の子どもであると認めることです。「婚姻関係がない男女の間に生まれた子供」とは、わかりやすい表現をすると「隠し子」を指します。
一般的には、父親自身が役所に行って手続きをすることで認知が可能です。
このとき隠し子が成人していれば、隠し子本人の同意も必要です。
ただ、この方法で子供を認知すると、それ以降父親の戸籍に彼の存在が記載されるようになるため、家族に知られてしまいます。
そこで、亡くなる前に遺言書に隠し子について書き記し、遺言によって認知をする方法も認められています。これを遺言認知といいます。
遺言認知を使えば「愛人との隠し子は、妻には秘密のままにしておきたいけれど、遺産は遺してあげたい」という父親の思いを実現することができます。
しかし、この遺言認知は、他の相続人にとっては迷惑千万な話です。相続人が増えれば、相続税の基礎控除額が増えるという面もありますが、それが嬉しいと感じる相続人はまずいません。
遺言認知で相続人が増えると相続できる財産が減るのはもちろんのこと、そもそも相続人ではなくなる人が出てくることもあるからです。
「財産が減るケース」と「相続人ではなくなるケース」
たとえば、被相続人に奥さんとお子さん2人がいて、そこに隠し子が現れた場合で考えてみましょう。
もともとの相続分は、奥さんが2分の1、お子さんが1人あたり4分の1でした。
しかし、そこに隠し子が加わることで、お子さんの相続分が1人あたり6分の1に減ってしまいます。
また、被相続人と奥さんとの間にお子さんがいない場合も考えてみましょう。子供がいなければ、被相続人の親や祖父母が相続人となります。親や祖父母もいなければ、兄弟姉妹が相続人となります。
ところが遺言認知で突如お子さんが現れた場合、親や祖父母、兄弟姉妹は相続人にはなれません。
生前の相続対策として「誰が何を相続するか」について話し合っていたとしても、相続人が変われば、すべて無意味なものになってしまいます。
そう考えると、遺言認知のメリットは父親にしかありません。残された家族にとっては、何のメリットもないことです。
生きている間はもめ事を避けたいけれど、隠し子にも遺産を相続させたい、という気持ちは理解できますが、ご家族のことを思うのなら、安易な利用は避けるべきと言えます。
■動画でわかる「安易な遺言認知は避けるべき」
天野 清一
税理士法人・都心綜合会計事務所
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