「おとりメニュー」の活用で、目的の選択肢へ誘導
あなたが忘年会や新年会の幹事をやるとする。居酒屋の飲み放題のコースは、Aコースは5品付きで4500円である。Bコースは7品にデザート付きで5500円である。選択肢が二つの場合は、迷いは少ない。安くあげたい場合はAコース、リッチにいこうというときはBコースになる。
しかし、このコースのほかに、デザートなしで7品5500円のCコースがあれば、あなたはどう判断するだろうか。Bコースと品数が同じでデザートが付かないものが、同じ5500円なのである。Cという選択肢が生まれたおかげで、Bコースの価値が上がった気がしてくる。ということは、Cという選択肢が生まれたおかげで、なんとなくBを選んでしまう人が増えるのではなかろうか。
Cを選ぶ人はいないが、それが存在する理由は十分にある。CコースはBコースを選ばせる「おとり」の役割を果たす。店側は、4500円のコースを選ばれるより、5500円のコースを選んでくれたほうが客単価は上がり、得になる。
また私たちの多くは、評価が中間のものを選ぶ傾向があることも知られている。和食の定食に「松・竹・梅」の3種類があるとき、値段は「松」が最も高く、「竹」が真ん中、「梅」は最も安い。もちろん料理の質もそれに応じている。多くの人は、懐具合にもよるが、中間の「竹」を選ぶことが多いのではなかろうか。この傾向を「妥協効果」と呼ぶ。人は無難な物を選びたがるのだ。
しかし、メニューに「松」と「梅」の2種類しかなければ、多くの客は(その店が当たりか外れかわからない場合は)、安い「梅」を選ぶのではあるまいか。なぜなら、外れたときのダメージを減らしたいから。だが店側にすれば、「梅」を選ばれると客単価が下がってしまう。「竹」という選択肢があることで、客は「梅」を選びにくくなるのだ。
センスの悪い「捨て色」に秘められた、洋服屋の狙い
洋服屋には「捨て色」という考え方がある。店が、同じ柄のTシャツを、赤、青、黄、白、黒の5色並べるとする。Tシャツの色もよい、柄もよいとする。Tシャツ自体の色と柄の色の相性もよい。
つまりは、5色ともハイセンスな商品なのだが、客はセンスのよいものが5つ並んでいると、選択に困るものだ。どっちもどっち、という感覚である。店員は客の応対にも時間がかかってしまう。
そんなとき、店側は、1色だけ「捨て色」を作る。この色のTシャツに、この色の柄はないでしょう、と言いたくなるようなセンスの悪い組み合わせをあえて作るのである。
一体どういうセンスの人がこの組み合わせを考えたのか。それを、センスが売り物の洋服屋が並べるとはどういうことなのか。客は理解に苦しむ。
しかし店側には、きちんと狙いがあるのだ。5色のうち、1色だけセンスの悪いものがあれば、残りの4色がよく見える。4色から選んだ客は、得した気になれる(同じ値段で駄目な商品もあるのだから)。4色をよく見せるために、1色を捨てるのである。
随分古い手法であるが、いまでも使われている。よほど効果があるのだろう。
売れ残った捨て色の1色は、それが春物なら、春が終わるころに店頭のワゴンに積まれて安い値段で売られることになる。
竹内 一郎
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