情報を独占する「囲い込み」が横行
今の不動産業界は「うそ」や「ごまかし」が横行していて、取引をした人が損をすることがとても多くあります。お客様に情報を隠して自分に都合のいい取引をしようとする、「お客様のために」というのは口先ばかりで、自社の儲けしか考えていない・・・。
「不動産業界の常識は世間の非常識」です。その最たるものが業界独特の「囲い込み」と「高額査定」です。今後、不動産の売買をされる方は絶対に知っておいてほしいことです。
たとえば、ある不動産業者がお客様から不動産物件の売却を依頼されたとしましょう。本来、その物件の情報は不動産業界全体で「共有」して、どの不動産会社でも販売できるようにしなければなりません。依頼をされた不動産業者だけがその情報を独占することは法律(宅地建物取引業法)で禁止されています。
売却の依頼を受けた物件は、不動産取引情報を掲載している「レインズ」※という業界内へのデータベースに登録することを義務づけられています。不動産業者はこれを見て売却不動産を探し、お客様へ情報を提供するわけです。いうまでもなくこれは、売却物件に対して、より多くの買い手がアクセスできるためのシステムです。これによって早く、適正な価格で不動産を売却できるわけです。
またこれによって大手不動産業者だけでなく、小さな不動産業者もさまざまな物件を広くお客様に紹介できるというメリットもあります。ところが、これを無視して情報を独り占めするのが「囲い込み」です。最近Yahoo! ニュースで取り上げられた関係上、多少改善の動きもありますが、実際にはまだまだ横行しています。まずはこの「囲い込み」の実態から話をしていきましょう。
※レインズとは? Real Estate Information Network Systemの略で、宅地建物取引業法に基づき国土交通大臣が指定する不動産流通機構が運営するネットワークシステムです。不動産流通機構の会員である各不動産業者が売却依頼された不動産情報を登録して共有することでスピーディーでスムーズな不動産取引を促進しています。会員である不動産業者はこのレインズで不動産情報を共有して幅広く買主を探せたり、取引事例に基づき適正な市場価格を把握できるのです(参考:レインズサイトから引用)。
1度の取引で2度美味しい「両手取引」
「囲い込み」といっても、俗に言う囲い込みと、不動産業界の囲い込みではかなり意味が違うのでご注意ください。
小売店やサービス業の「ポイントカードで特典ゲットできます!」とか「メルマガ会員限定○%割引」などといったサービスは誰でも目にしたことがあるでしょう。これが本来の囲い込みです。要は「お客様のニーズに合った商品やサービスを提供してリピーターを獲得したり固定客化を図ること」をいうのです。
しかし、不動産業界の囲い込みは、そんなよいものではなく、「とんでもないもの」なのです。囲い込みの説明をする前に、ちょっとだけ不動産の「仲介手数料」についてお話させてください。たとえば3LDKのマンションの売却を希望しているAさんがいたとします。AさんがBという不動産業者に売却を依頼したとします。
一方、不動産の購入を希望しているCさんがいたとします。CさんはDという不動産業者に「3LDKのマンションを買いたいのだが、条件に合う物件はないかな?」と依頼しました。
Aさん→B社
Cさん→D社
という関係です。
D社はレインズでAさんの売却希望物件の情報を得て、B社に連絡します。ここで条件その他の折り合いがついて、AさんとCさんの間で売買契約が成立したとします。
このときB社はAさんから、D社はCさんから仲介手数料を受け取ります。この手数料は法律で「上限」が決められていて、その範囲内で各社が設定しています。
このとき、Aさんから売却の依頼を受けたB社が、自分で「買いたい」というお客様を見つけてくれば、B社は売り主と買い主、両方から手数料を受け取れるわけです。これを業界では「両手取引」といいます。一方、最初に紹介した売り主か買い主、どちらから一方から受け取る場合は「片手取引」と呼ばれます。
これは業界ではごく当たり前に使われる言葉ですが、そもそもお金を払ってくれるお客様を「片手」「両手」呼ばわりするなんて失礼な話ですよね。筆者は業界に入った最初からこの言い方に抵抗を持っていて、あまり使いたくないのですが、業界の実態を皆さんに知っていただくためにも、本連載では使用することにします。
それはともかく、不動産会社にとってどちらの取引が得か。両手取引のほうが「おいしい」のは言うまでもありません。一つの取引で「倍」儲かるわけですから。もちろん「両手取引」そのものが悪いというわけではありません。公正な商業活動を行った結果として、「売り主も買い主も自分のお客様だった」というのであれば、何の問題もありません。会社としては利益を生み出すために両手取引ができるよう努力を行うのは当然のことです。ただし、当然それは正当な営業活動の範囲での話です。