販売査定額が一番高かった大手に決めたが・・・
Iさんはこの3月から娘さん夫婦と同居予定。お孫さんの小学校入学を機会に、娘夫婦が実家に入ることになったのです。かわいい孫と娘夫婦と一緒のにぎやかな暮らしをIさんはとても楽しみにしています。そのために今住んでいる一戸建てを二世帯住宅にリフォームすることに決めました。Iさんは所有している収益マンション(築5年、購入価格2200万円)を1戸、売却してその費用に充てたいと考えています。
そこで3社の不動産屋に査定を依頼しました。そのうち一番低い額を出してきたのがJ社。それはIさん自身が自分でネットなどで調べて、「相場はだいたいこのぐらいかな」と見積もっていた額とほぼ一致していました。ところがK社の出してきたのはそれより200万円高い額、さらにL社が出してきたのはそれよりもさらに300万円も高い額です。
L社の営業マンは「うちだからこの価格で取引できるのです」「当社は全国ネットワークだから安心です」と胸を張ります。不動産を売却した経験がないIさんは、「さすがL社は大手だけあるな。高く売ってくれるのならそれに越したことはない」とL社に依頼することにしました。それもL社以外では販売のできない「専任(専属専任契約)」(後述)での契約です。ところがここにとんだ「落とし穴」があるのです。
販売査定は「売れるかも」という可能性に過ぎない
まず査定には「販売査定・標準査定・買取査定」の3つがあることを知っておいていただきたいと思います。
●販売査定(高め)
物件の魅力を最大限に表す販売最高可能額。チャレンジ査定
●標準査定(平均的)
3か月程度で売却ができることを見込んだ計算上みちびかれる平均的な査定額。この査定額より少し高く売れることが一般的
●買取査定(低め)
仲介ではなく買取りなので、ウソをつけない即決価格。標準査定より2〜3割安価が通例、この金額が高い方がほかの2つの査定の信頼性も高い
販売査定は、物件の魅力を最大限に表す額です。チャレンジ査定と言ってもいいかもしれません。この価格で高値な分、ご成約までには時間がかかります。K社、L社が出してきたのもこの価格。しかしK社はまだしも、L社の出してきた査定はあまりにも相場とかけ離れていて、売却は非常に難しいと言えます。
要は、販売査定は「売れるかもしれない」「可能性がある」という額に過ぎないのです。標準査定は、3か月程度で売却が適う事を見込んだ、計算上導かれる平均的な査定額です。J社が出してきたのはこの金額です。通常は、この査定額より高値で売却できるのが一般的です。
周辺マンション事例や市場の価格推移などを勘案して、計算上導き出される金額なので、この金額を受け入れる気持ちがとても大切です。これに対して、買取査定というのは、不動産会社が直接買い取る場合の価格。即決(すぐに契約)となるので、通常査定より2割から3割程度安くなるのがほとんどです。ここはもうウソのつけない価格となります。