2021年11月分鉱工業生産指数・速報値について (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

生産は自動車工業など11業種が前月比上昇し、2ヵ月連続で前月比上昇

 

基調判断は「足踏みをしている」から「持ち直しの動きがみられる」に上方修正

 

アニマルスピリッツ指標・DI1ケタのマイナスに縮小、3ヵ月連続前月比上昇

 

11月分先行CI・一致CIは2ヵ月ぶり前月差上昇に。基調判断は「足踏み」

 

 

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・11月分速報値・前月比は+7.2%と、部材供給不足の影響などが10月分から一段と緩和されたことを受けて、2ヵ月連続の上昇となった。季節調整値の水準は97.7で、21年7月の98.1以来の水準である。前年同月比は+5.4%で3ヵ月ぶりの上昇となった。

 

●11月分鉱工業生産指数では、全体15業種のうち、自動車工業、プラスチック製品工業、鉄鋼・非鉄金属工業など11業種が前月比上昇、無機・有機化学工業、石油・石炭製品工業、化学工業(除.無機・有機化学工業・医薬品)など4業種が前月比低下となった。

 

●経済産業省の基調判断は20年4月分・5月分で「総じてみれば、生産は急速に低下している」だったが、6月分で、「生産は下げ止まり、持ち直しの動きがみられる」に上方修正された。7月分で下げ止まりが外れ、「生産は持ち直しの動きがみられる」となった。8月分では、「生産は持ち直している」に上方修正された。その後、21年7月分まで、「生産は持ち直している」で据え置きになっていたが、8月分では、19年1月分・2月分以来の、「生産は足踏みをしている」に引き下げられ、9月分と前回10月分では判断が継続となった。今回11月分では「生産は持ち直しの動きがみられる」に上方修正された。

 

●先月発表された製造工業予測指数11月分は前月比+9.0%の上昇の見込みであった。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値では、11月分の前月比は先行き試算値最頻値で+4.2%の上昇見込みで、90%の確率に収まる範囲は+2.2%~+6.2%になっていた。実際には、鉱工業生産指数の前月比が+7.2%上昇になったが、これは製造工業予測指数を1.8ポイント下回る上昇率だが、一方で試算値上限を1.0ポイント上回る上昇率になった。

 

●11月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比+7.4%と2ヵ月連続の上昇になった。前年同月比は+3.5%で3ヵ月ぶりの上昇となった。

 

●11月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比+1.7%と3ヵ月連続の上昇になった。前年同月比は+5.2%と3ヵ月連続の上昇になった。

 

●11月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比▲2.6%になった。前年同月比は+0.4%と3ヵ月連続の上昇となった。

 

●鉱工業全体の在庫循環の動きをチェックするために、縦軸に鉱工業在庫指数・前年比、横軸に鉱工業出荷指数・前年比をとった在庫サイクル図をつくると、20年7~9月期までは「在庫調整局面」の状態にあったが、20年10~12月期、21年1~3月期では「意図せざる在庫減局面」になっていた。4~6月期では在庫の前年同期比▲5.0%、出荷が前年の反動もあり、前年同期比+18.8%と2ケタの伸び率になり、「在庫積み増し局面」に入った。7~9月期では在庫が前年同期比+0.5%、出荷が前年同月比+4.2%の伸び率になり、引き続き「在庫積み増し局面」となっていた。10~11月分では在庫が前年同期比+5.2%、出荷が前年同月比▲1.1%の伸び率になり、「在庫積み上がり局面」となっている。しかし、部材調達不足による生産の減少による影響が大きいなど特殊事情もあり、目先、動向を注視していくことが必要な局面だろう。

 

 

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると12月分は前月比+1.6%の上昇、1月分は前月比+5.0%上昇の見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、12月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲1.3%の低下になる見込みである。90%の確率に収まる範囲は▲3.4%~+0.8%になっている。

 

●先行きの鉱工業生産指数、12月分を先行き試算値最頻値前月比(▲1.3%)で延長すると、10~12月期の前月比は+1.0%の増加になる。さらに1月分を製造工業予測指数前月比(+5.0%)で、2・3月分を前月比ゼロで延長すると、1~3月期の前期比は+6.4%の増加になる。また、12月分を製造工業予測指数前月比(+1.6%)で延長すると、10~12月期の前月比は+2.1%の増加になる。さらに1月分を製造工業予測指数前月比(+5.0%)で、2・3月分を前月比ゼロで延長すると、1~3月期の前期比は+8.6%の増加になる。新型コロナウイルスの新たな変異株オミクロン型の今後の動向など、懸念材料もあるが、今のところ生産指数は、7~9月期は5四半期ぶり前期比低下の後、10~12月期、1~3月期と連続して、前期比上昇基調に戻る可能性が大きいだろう。

 

(アニマルスピリッツ指標)

経済産業省は製造工業生産予測指数からアニマルスピリッツ指標を作成している。21年6月調査結果で、アニマルスピリッツ指標(生産活動マインド指標:DI)は11ヵ月連続のプラスの数値となり、企業の生産マインドは強気超の状況が続いていたが、7月~12月調査結果ではDIはマイナスになっている。12月調査結果のDIは▲5.5である。まだ、弱い数字だが、11月調査結果からは4.7ポイント改善した。これで3ヵ月連続改善となった。

 

 

(11月分の景気動向指数・速報値予測)

●11月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+1.8程度と2ヵ月連続の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列が前月差プラス寄与に、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストックの4系列が前月差マイナス寄与になるとみた。

 

●11月分の一致CIは前月差+2.9程度と2ヵ月連続の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率、輸出数量指数の7系列が前月差プラス寄与に、投資財出荷指数1系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

 

●11月分で景気の基調判断は、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」継続になると予測する。予測通りだと3ヵ月後方移動平均は前月差+0.57程度の上昇になる。「改善」に戻るためには、「3ヵ月以上連続して、3ヵ月後方移動平均が上昇」という条件があるため、12月分までは「足踏み」のシグナルが点灯し、前月差上昇の条件も満たせば、早ければ3月8日発表の1月分で「改善」に戻りそうだ。

 

●11月分の先行DIは55.6%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数の5系列がプラス符号に、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新設住宅着工床面積、マネーストック、中小企業売上げ見通しDIの4系列がマイナス符号になるとみた。

 

●11月分の一致DIは87.5%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率、輸出数量指数の7系列がプラス符号に、投資財出荷指数1系列がマイナス符号になると予測した。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年11月分鉱工業生産指数・速報値について』を参照)。

 

(2021年12月28日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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