長期金利は上下に変動
感染拡大による景況感やインフレの影響
■2021年の米欧の長期金利(10年国債利回り)は、年初から3月にかけて水準を切り上げた後、景況感やインフレ期待の上下に連れて変動する展開となりました。年前半は、新型コロナのワクチン接種の進展により、世界的に景気回復期待が高まり、合わせてインフレ率の上昇を要因として、米欧を中心に長期金利は上昇しました。その後、夏場にかけては、新型コロナの変異ウイルスの感染急増があり、長期金利は低下しました。秋以降は米欧でのインフレ長期化の観測が高まり、長期金利は再度上昇しました。年末にかけては、オミクロン型の出現により、利回りはやや低下しています。
スプレッドは落ち着いた動きに
利上げ期待で年末は多少拡大へ
■米国の社債利回りと米国債利回りの差(スプレッド)は比較的狭いレンジ内での動きとなりました。景況感は新型コロナの感染拡大状況に応じて強弱が出ましたが、企業の債務支払いへの強い懸念につながることは無く、スプレッドは落ち着いた状況になりました。ただ、秋以降は、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ期待が高まり、これに連れてスプレッドは多少拡大しました。
長期金利は緩やかに上昇
■米国が利上げ局面に入ると予想されることから、主要国の国債利回りには上昇圧力がかかると予想されます。当面のリスクとしては新型コロナの感染動向ですが、ワクチンの効果(重症化・死亡率抑制)を背景に、感染抑制と経済活動のバランスを取り、FRBが金利の急上昇を回避するようにかじ取りを行うとみられます。欧州中央銀行(ECB)も来年の前半から量的緩和を縮小する局面に入ると見込まれます。但し、インフレ圧力の高まりは限定的なため、利上げは再来年になる見込みです。日銀は、物価目標の達成が依然として見通せないなか、現行の大規模金融緩和を継続するとみられます。これらによって、景気回復の下でも世界の長期金利の上昇は緩やかなものとなる見通しです。
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(2021年12月23日)
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