※画像はイメージです/PIXTA

税制改正のたびに「富裕層を狙い撃ち」というキーワードが踊りますが、本当に税制改正で富裕層は増税となったのでしょうか。相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の天満亮税理士が検証します。

基礎控除額引き下げで増税になった人たちは富裕層か?

平成25年度の税制改正により、平成27年以降の相続税の基礎控除額(非課税枠)が大幅に縮小されました。税率も変わりました。

 

非課税枠が減るということは、課税対象額が増えるということなので、確かにこの改正は相続税の増税です。

 

相続税の対象者は増え、今まで相続税を支払わなくて済んだ層までが相続税を支払わなければならなくなりました。今まで相続税を支払っていた層も、より多くの相続税を支払うことになったでしょう。

 

ですが、このことをもって「富裕層が狙い撃ちされた」という表現をするには、個人的にはかなり違和感があります。

 

たとえば法定相続人3名であれば、税制改正前の基礎控除額(非課税枠)は8,000万円でしたが、改正後は4,800万円となりました。実務で見ていますと、税制改正前であれば相続税はかからなかったが税制改正後なので相続税がかかった、というケースが非常に多い印象です。つまり、資産5,000万~8,000万円程度の方々がそもそも多く、その方々に大きな影響を与えた税制改正だったということです。

 

富裕層の正確な定義はよく分かりませんが、金融資産1億円以上の方々を指すことが多いようですので、仮に富裕層をそのように位置付けると、基礎控除額の縮小で大きな影響を受けた方々はそもそも富裕層ですらないということになります。

 

この層の方々を巻き込んだ増税をしたところで、(国家レベルでは)税収増額も微々たるものでしょうし、「格差の固定化防止」が解消されるとも思えません。

給与所得控除の見直しで増税になった人は富裕層か?

平成30年度税制改正により、令和2年から給与所得控除が縮小されました。控除が縮小するということは、それだけ課税対象額が増えることになるので、もちろん増税です。

 

年収850万円以上の人は、一律195万円の給与所得控除しか受けられなくなりました。年収850万円というと、年齢にもよるでしょうが、どちらかと言われれば低収入ではなく高収入の方かもしれません。

 

しかし、富裕層と言えるような生活ができるような収入かと言われると、そうでは無いと思います。一昔前の感覚ならともかく、所得税、住民税、そして高額な社会保険料がここから天引きされるわけですから、可処分所得は限られます。それこそ親が富裕層でなければ、いわゆる富裕層と言われるような金融資産を貯められるような収入ではありません。

 

このような、頑張って高収入を稼いでも富裕層にはなれない(であろう)人たちを巻き込んだ増税で、「格差の固定化防止」が解消されるとも思えません。

覚悟をもって「格差の固定化の防止」を進めたいのか?

ここ10年の税制改正の中で、比較的インパクトがあり、増税となった件をご紹介しましたが、とても富裕層を「狙い撃ち」したと言えるようなレベルではなく、(富裕層ではないけれど)そこそこ資産や収入があるので大きな反対も無く税金を取りやすいのでそこから取ろうとした、ということに過ぎないと感じます。

 

本当に「格差の固定化の防止」を進めたいのであれば、反対を押し切って超富裕層から相続税やそれ以外の名目できちんと徴収できる制度を作るしかないと思います。

 

富裕層であれ、富裕層ではない層であれ、いずれにしても国民が労働意欲をなくしたり白けてしまうような増税は避けてほしいと願っています。

 

税理士法人ブライト相続

税理士 天満 亮

 

 

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