(阪神・淡路大震災の様子/PIXTA)

「違和感を禁じ得ないものばかり。」被災地の情報解析サービスを展開する、株式会社Spectee代表取締役・村上建治郎氏は、東日本大地震時のボランティア活動の実態を赤裸々に明かしています。自らも阪神・淡路大震災の被災者であった同氏が、「いちボランティア」として見たものとは。

「全国各地からボランティア集結」なのに「人手不足」

例えば、ある情報番組では、甚大な被害を受けた宮城県石巻市のボランティアセンターを取材陣が訪問し、受付に並んでいるボランティア希望者の行列の模様が中継された。レポーターは「全国各地からボランティアが集まっています」という主旨で現場の状況を説明していた。

 

テレビに映し出される光景を見ていると「これだけ人が集まっているのであれば、今から行っても、もうやることはないのでは?」と錯覚するほどだった。

 

だが、そんなはずはないのである。

 

ゴールデンウィークには1日1万人のボランティアが集まったが、震災後の3カ月間で活動したボランティアは、阪神・淡路大震災が延べ約117万人だったのに対し、東日本大震災で甚大な被害を受けた東北3県では延べ約42万人なのだ。

 

阪神・淡路大震災の規模ですら、震災後は人手不足で大変だった。まして、桁違いの被害で広範囲にわたり破壊されたこの被災地で、その3分の1の人数で人手が足りていることなどあり得ない。やるべきこと、できることはいくらでもあるはずだ。

 

実際、私が石巻市のすぐ隣の東松島市に行ってみると、ここのボランティアセンターの係の人は「誰も来てくれない」「人が足りなくて困っている」と嘆いていた。特に津波の被害に遭った地域では、膨大な量の瓦礫を撤去する必要があった。

 

発生した瓦礫の推定量は被災3県合計で2000万トンを超えており、これは阪神・淡路大震災の約1.7倍に相当する量である。人が余っていることなど、あろうはずがない。しかし、その情報は的確に共有されていない。

 

現実と報道とのギャップを肌で感じながら、私は宮城県東松島市に10日ほど滞在し、ボランティア活動を行った。

次ページメディアが映す光景は「たまたま中継車が入った場所」

※本連載は、村上建治郎氏の著書『AI防災革命 災害列島・日本から生まれたAIベンチャーの軌跡』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

AI防災革命 災害列島・日本から生まれたAIベンチャーの軌跡

AI防災革命 災害列島・日本から生まれたAIベンチャーの軌跡

村上 建治郎

幻冬舎MC

激甚化する自然災害をAIで救い、災害状況を即時に可視化して予測する。AIベンチャーが描く未来の防災 2011年の東日本大震災から、早いもので10年が経過している。 災害大国である日本は、今も予報技術の開発や防災設備の…

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