メディアが映す光景は「たまたま中継車が入った場所」
■メディアの情報は現場を反映していなかった
メディアから発信される情報と実際の現地で得られる情報には大きな乖離がある。東京のテレビで見られる情報と現場の状況はまったく違う。
東松島市で私はそのことを強く実感した。特にテレビという媒体は、事実の一面をセンセーショナルに切り取って映すことには長けているが、カメラが行ったその場、その瞬間の情報しかとらえられない。「現場の様子」というが、それはたった一カ所の事実に過ぎない。
しかし、番組でその場所、その瞬間が象徴的に取り扱われてしまうと、あたかもそれが全体の情勢であるかのように誤解されてしまうのである。被害が大きかった石巻市は、代表的な被災地であったため、さっそく人が集まり、テレビの中継が入り、多くの人が集まった。それをテレビは「全国からこんなにボランティアが来ています」と中継した。
それによって、東北全体で同じようにボランティアが集まっているかのような錯覚を視聴者に与えてしまっていたのである。しかし、東北全体がそうだったわけではない。人が足りていないところは、当時、いくらでもあった。
テレビという媒体には、「たまたま中継車が入った場所の状態が映るだけ」という縛りがどうしてもつきまとうことを私は痛感した。これでは本当の災害の状況を把握し、的確な対処をすることができない。報道機関が被災地の力になりたいと思っても、効果的に役割を果たせていないのだ。
村上 建治郎
株式会社Spectee 代表取締役 CEO