「全国各地からボランティア集結」なのに「人手不足」
例えば、ある情報番組では、甚大な被害を受けた宮城県石巻市のボランティアセンターを取材陣が訪問し、受付に並んでいるボランティア希望者の行列の模様が中継された。レポーターは「全国各地からボランティアが集まっています」という主旨で現場の状況を説明していた。
テレビに映し出される光景を見ていると「これだけ人が集まっているのであれば、今から行っても、もうやることはないのでは?」と錯覚するほどだった。
だが、そんなはずはないのである。
ゴールデンウィークには1日1万人のボランティアが集まったが、震災後の3カ月間で活動したボランティアは、阪神・淡路大震災が延べ約117万人だったのに対し、東日本大震災で甚大な被害を受けた東北3県では延べ約42万人なのだ。
阪神・淡路大震災の規模ですら、震災後は人手不足で大変だった。まして、桁違いの被害で広範囲にわたり破壊されたこの被災地で、その3分の1の人数で人手が足りていることなどあり得ない。やるべきこと、できることはいくらでもあるはずだ。
実際、私が石巻市のすぐ隣の東松島市に行ってみると、ここのボランティアセンターの係の人は「誰も来てくれない」「人が足りなくて困っている」と嘆いていた。特に津波の被害に遭った地域では、膨大な量の瓦礫を撤去する必要があった。
発生した瓦礫の推定量は被災3県合計で2000万トンを超えており、これは阪神・淡路大震災の約1.7倍に相当する量である。人が余っていることなど、あろうはずがない。しかし、その情報は的確に共有されていない。
現実と報道とのギャップを肌で感じながら、私は宮城県東松島市に10日ほど滞在し、ボランティア活動を行った。